消えていく星の流線を

デフォで重め

Mr.Children『CANDY』の歌詞を少しだけ深く考えた。

 
高校生の頃にやっていたブログには、音楽について考えたことをつらつらと書いていて、自分なりの歌詞の解釈を上げたりしてました。
 
その中でも『CANDY』の歌詞についての記事には今でも定期的にアクセスがあるようです。この曲はMr.Childrenの中でも隠喩が多く、難解な曲のひとつだからだと思われる。
 
今回またこの曲について書くにあたり、「Mr.Children CANDY 歌詞」で検索したら結構上の方にその例の記事が出てきてびっくりするってやつ。ありがとうございます。
 
5年以上前に書いた記事ですが、まさに今、どこかの誰かの音楽人生を少しでも豊かにできているのかも。インターネットって素晴らしい。
 
掘り起こしたこの黒歴史をグレーくらいにはしておきたい。
ということで当時の解釈をベースに大幅加筆、修正しましてMr.Children『CANDY』の歌詞を掘り下げていきたいと思います。邪推含む。
 
引用部分と赤字部分が元の歌詞、黒字部分が考察、
「」内が歌詞を噛み砕いた文、【】内が辞書的な言葉の意味です。
 
どーぞ。
 
※以下、わたしの個人的考察を書いていきます。桜井さんの歌詞は聞く人によって感じ方が分かれる、ストーリーの余白を残したものが多いです。つまり「これが絶対正しい」という解釈は存在しません。この記事をきっかけに、誰かの世界が広がれば幸いです。
 
 
 
 
『CANDY』Mr.Children
作詞・作曲:桜井和寿
 
 
 
 
 
「あきらめよ」と諭す回路に 君がそっと侵入してきて
何食わぬ顔で 夢をチラつかす

 

「あきらめよ」と諭すとあります。「諭す」というのは【正しい事をよく言い聞かせわからせる】というような意味です。
つまり単純に捉えると、君と僕の恋愛は正しくない、許されていない、と理解できます。
 
回路とは思考回路のことです。頭では君のことを諦めなければならないことが分かっているが、その思考に君がそっと侵入し邪魔してくる。「そっと」とあるので、君は静かに、おそらくは無意識的に頭に浮かんでくることが分かります。
 
そして何食わぬ顔で 夢をチラつかす
「何食わぬ顔」を辞書で引くと【何も知らない、自分には関係ないという顔つき、またはそのように振る舞うようす】【物事に無関係であるかのように感情を出さない表情】と出ます。
つまり僕の思考回路の中の君は「別れの悲しみを知らない、しれっとした表情を見せる」ので、「僕は『君と一緒になれるのではないか』という夢を見てしまう」。夢というよりも、ほぼ実現不可能な幻想に近いでしょう。
 
と、歌い出しの2行だけで僕と君は現在、恋愛が許されていない状況であることが分かります。
少ない情報量で、直接的表現を用いずに、現状や僕の心情まで完璧に描き出してしまう桜井さんは本当に凄いです。
 
さて、僕と君の恋愛が許されていない理由ですが、2つのパターンが考えられます。
 
 
僕と君は以前付き合っていたが、今は別れ、僕と君のどちらかあるいは両方に妻、夫がいる。「別の恋人がいる」だけだと「恋愛が許されていない理由」としては弱いので、既に結婚している可能性が高いです。
 
僕と君は、何らかの理由で恋愛関係になれない立場にあり、僕の片思いである。
ここは本当に想像の域を出ませんが、「身分が違う」「許嫁がいる」あるいは「僕と君は同性であり、僕はホモセクシャルで、君はヘテロセクシャルである」などでしょうか。
 
 
ここまではどちらの解釈でも問題なさそうですが、歌詞が進んでいくにつれ、以上の2つの間でずれが生じてきます。
以下、①②と出てきたらこの2つの例を指していると思ってください。
 
 
 
 
上手に包んで仕舞ったものが「飛び出したい」と疼いてる
痛い記憶を最後に寝たふりしていたくせに

 

 
 ここはダブルミーニングになっています。
 
A.
のちのち出てきますが、この曲の中では恋心=キャンディーと表しています。
上手に包んで仕舞ったもの、それは君への恋心。キャンディーを包み紙に包むように、隠して隠して上手に閉じ込めておいたはずの恋心が、「飛び出したい」と疼いてる
 
痛い記憶を最後に寝たふりしていたくせに
「君に失恋して以来、への恋心が再び現れることはなかったのに」。
 
これが1つ目の意味です。
 
B.
2つ目の意味は、この部分が性行為の隠喩であることです。
Mr.Childrenの歌詞にはさらっと、それも婉曲的に(時にはかなり直接的に)セクシャルな描写が入ってくることが結構あります。
こちらのサイトに分かりやすくまとめてくれている方がいます。エッチなの苦手な人は見ないでね。
このサイトには書かれてないですが『youthful days』のサボテンの花のくだりは有名ですよね。 
 
上手に包んで仕舞ったものが何かは察してください。
話逸れますけどアルバム『I ❤ U』にはコンド…の曲も入ってますよね。
 
ここで先ほどパターン分けした①と②の若干の違いが出てきます。
 
①僕は妻(君ではない)とセックスしている。ここで僕には妻がいることが確定できそうです。もしかすると妻でも君でもない誰かと浮気している可能性もありますが、話が複雑になりすぎるのでその線は消していきます。
 
②僕は君ではない誰かとセックスしている。恋人かもしれないし、行きずりの相手かもしれません。
 
痛い記憶を最後に寝たふりしていたくせに
「最後までした後お喋りなどもせず、すぐに寝たふりをしていた」
現在の相手に対しては愛情がとても淡白なようです。
 
 
 
 
柄でもないけど 会えると嬉しいよ
悩んだ末に想いを飲み込む日々
ほろ苦いキャンディーが まだ胸のポケットにあった
気付かせたのは君

 

 柄でもないけど 会えると嬉しいよ
「普段は人と会って手放しで喜ぶ性格でもないが、君は特別で、会えると嬉しいよ」
 
①別の相手と結婚したものの、君とは別れた後も、友達として定期的に会える関係であるようです。
②僕は君に片思いを続けながらも、その恋心を隠して今も友達として定期的に会っているようです。
 
悩んだ末に想いを飲み込む日々
「会う度に想いを打ち明けようか迷うが、喉元まで出かけた言葉を結局いつも言えずに飲み込んでしまう」
飲み込むのは、好きという「言葉」と「キャンディー=恋心」の2つです。
僕は君への恋心をどうにか打ち消そうと頑張っています
 
ほろ苦いキャンディーが まだ胸のポケットにあった 気付かせたのは君
「そんな風に君への想いを消そう、諦めようと必死だった僕だが、やっぱり僕の胸には昔と変わらず君への恋心があった。君に会って想いが鮮明に蘇り、まだ君を好きであることに気付かされた」
 
タイトルの「キャンディー」というワードが満を持してここで登場します。
「胸にある、ほろ苦い」もの……と言えば、恋心以外にないでしょう。ここで曲中では恋心=キャンディーと表されていることが分かるはずです。素敵な表現ですよね…!
 
 
 
 
多くの事を求め過ぎて 出来るだけ側に居たくて
そんなことをしてる間に息が詰まる

 

 
 ①出来るだけ君の側にはいたいけど、現在の妻との家庭も失いたくない。二兎を追う者状態です。そんなジレンマに息が詰まっていく
 
君が好きすぎて「ああしたい、こうしたい」という気持ちばかり膨らむ。しかし片思いであることは変わらず、叶わない恋に苦しさは増していく。
 
 
 
 
大抵 人はこんな感じで大事なもんを失うんだろう
そして凝りもせず 君を欲しがってる

 

 
この部分で①と②の解釈に大きな差が生まれてきます。
 
ここでもう一度、「僕」と「君」の関係について考え得る2つのパターンを示しておきます。
 
①僕と君は以前付き合っていたが、今は別れ、僕は別の女性と結婚し家庭を持っている(君も既に結婚している可能性あり)。
 
②僕と君は、何らかの理由で恋愛関係になれない立場にあり、僕の片思いである。
 
 
この部分の解釈は
 
①二兎を追う者は一兎をも得ず、と言う通り、僕はついに家庭も君も失ってしまった。繋ぎ留めていたものを両方失ってしまったのに、僕は性懲りもなく君と一緒になりたいと思っている。
 
僕は君を求めすぎたあまり、君に二度と会えない状況になってしまう。そんな状況でもまだ、君のことが好きである。
 
 
①の場合の「大事なもん」は家庭と君の2つ、②では君のみを指していることになります。
 
②で注意したいのは「僕が君に告白して振られた」わけではないということ。1番サビに「想いを飲み込」んでしまうとあるからです
では何故僕は君を失ってしまったのか?歌詞に描かれている状況からはこれ以上の追求はできません。
 
このあたりの歌詞から②パターンだとはっきり読み取れないところがあり、なんかモヤモヤします。
①の方がより主人公の状況に近いと考え、以下、①のパターンに絞ってみます。
 
 
 
みっともないけど すべてが愛しいよ
ふと夕暮れに孤独が爆発する

 

 
みっともないけど」の前には「家庭を失って君にも会えなくなって、全て失って何もない僕は(みっともないけど)」という部分が省略されていると考えられます。
「みっともない」は「見とうもない」が変化した言葉で、人が見たくない、つまり【目を覆いたくなるほど醜い、見苦しい様子】を表します。
全てを失った今の僕は、見ていられないほど醜いけど、君のすべてが愛しいよ
 
ふと夕暮れに孤独が爆発する
ここで「孤独」というワードが出てきました。僕が1人になってしまったことがハッキリ示されています。
また、隠喩が多いこの曲において「夕暮れ」のように直接的な風景・時間帯描写はここで初めて登場します。この「夕暮れ」というワードで初めて、聞く人は具体的な景色を思い浮かべることができるわけです。そのおかげでここのシーンは色濃く、鮮やかに印象に残るという仕掛けなんですね。
 
僕はここまで、君への「想いを飲み込」んだり、君と妻との板挟みで「息が詰ま」ったり、感情を押し殺して生きてきた。
しかし独りになったことで感情を殺す必要がなくなり、孤独という感情が爆発してしまった。
 
桜井さんはつねづね、一番言いたいことは2番のサビに入れ込むと発言しています。この曲で一番際立たせたかったのはこのシーンなのかもしれません。
 
 
 
 
甘酸っぱいキャンディーが 僕の胸のポケットにあるんだ
君が食べておくれ

 

 1番では「ほろ苦いキャンディー」だったのがここでは「甘酸っぱいキャンディー」に変わっています。これはどういう違いでしょうか。
 
このキャンディーはほろ苦さと甘酸っぱさ、2つの味を持っていることが分かりました。つまり僕の君への恋心は「ほろ苦さ=苦しさ」と「甘酸っぱさ=幸せ」の2つの側面を持っている
1番の僕は君への想いを飲み込んでいるため、苦しい(=ほろ苦い)。
対して2番の僕は、直前の部分で示した通り、感情のリミッターが外れた状態です。そのため君への想いが止まらなくなり、幸せな時間を思い出している(=甘酸っぱい)。
こんな感じでしょうか。
 
もう君には会えないのに、君が愛しくて仕方ない……なんて矛盾した感情でしょう。
 
「ほろ苦い」も「甘酸っぱい」も、日本語で恋心を表現する際によく使われます。バレンタインチョコのほろ苦さは恋のそれを表しているとか、初恋はレモンの味とか言いますよね。
一般に、「ほろ苦い」は叶うことが難しい恋、「甘酸っぱい」は恋の始まりや初恋などのキラキラした気持ちを表します。
僕の恋心はそのどちらか一方ではなく、両方を併せ持った複雑な気持ちだということでしょう。
 
僕の胸のポケットにあるんだ
1番では「胸のポケットにあった」と過去形だったのが「あるんだ」と現在形になっています。
「僕は今も、現在進行形で、君が好きだ」
 
君が食べておくれ
「そして僕が恋心を捧げるのは、やはり君だけ」
 
 
 
 
昨日の夜 いつもの偏頭痛が僕を襲って 飲み込むタブレット
やけに会いたくて 声が聞きたくなって 

 

 「夕暮れ」に続き「昨日の夜」という時間帯描写が出てきました。夕暮れよりも時間帯が遅くなり、僕の心情に暗い影を落としていきます。
 
続いて「偏頭痛が僕を襲って」。ここは二日酔いしてるのかな?ヤケ酒?と思ったのですが、確信が持てないのでいちど「偏頭痛」について調べてみることにしました。
 
偏頭痛の誘因は以下のようなものに分けられるようです。
ファイバー株式会社という製薬会社のホームページより引用。
 
・精神的ストレスからの解放
・月経による女性ホルモンバランスの変化
・遺伝
・アルコールや特定の食べ物の影響
・空腹
・人ごみ、騒音、眩しい光、匂いなどの影響
・天候の変化や温度変化
・睡眠不足
 
結構幅広いですね。偏頭痛の原因は個人差によるところが大きいようです。
 
この中から「僕」の偏頭痛の誘因と予想できるものは……
「アルコールや特定の食べ物の影響」「空腹」「睡眠不足」くらいでしょうか?
 
「アルコールや特定の食べ物の影響」→君を失ったストレスでヤケ酒、アルコール依存症の可能性もあり
「空腹」→君を失ったショックでまともな食事もままならない
「睡眠不足」→君を失ったショックで眠れない
 
この中でも、歌詞に「」(眠りを連想させる)とあるので、睡眠不足の可能性が高いのでは、と考えます。もしくはダブルパンチ、トリプルパンチの可能性もあり。
 
余談ですが、偏頭痛は女性ホルモンとの関係が深いらしく、偏頭痛持ちの女性は男性の4倍ほどいるらしいです。曲中の「偏頭痛」は僕の女々しさや弱さを暗に示しているのかも。
 
次に「飲み込むタブレット」と出てきます。僕が不眠症であるとすると、タブレットとは睡眠薬だと考えるのが自然です。
しかも「いつもの」ということは、日常的に睡眠薬を服用するほど症状が深刻である可能性が高い。
ちょっと調べてみたらアルコール依存症タブレット状の薬も存在するみたいなので、そっちの線でも良さそう。
 
やけに会いたくて 声が聞きた」いのに、(何らかの原因で)君に会えなくなってしまったため、それは叶わない。僕は今、君への愛情のはけ口がなくなっている状態です。
 
めちゃくちゃ個人的な話なんですけど深夜3〜4時くらいって一番泣きたくなりません?ならないか。良い子の皆さんは寝てる時間か。
 
 
 
 
みっともないけど すべてが愛しいよ
ひとり夜更けに孤独が爆発する

 

 
ここで転調し、キーが2つ上がります。僕の感情がさらに昂っていることが表現されています。
 
大サビの歌詞は2番のサビを踏襲し、少しいじった形になっています。もちろん桜井さんはわざと2番の歌詞とは変えているので、そのいじった部分こそが大事になってきます。
 
みっともないけど すべてが愛しいよ
ここでは、2番サビの「みっともないけど」にもう1つ、みっともない要素が加わりました。Dメロで描かれた不眠症です。
「家庭も君も全て失って、さらに不眠症(やアルコール依存症にもなってしまった僕は(みっともないけど)」という事です。
 
ひとり夜更けに孤独が爆発する
2番サビよりもさらに孤独が強調されています。「ひとり」でさらに「孤独」ってどんだけ孤独なんだ。
そして2番の「夕暮れ」が「夜更け」に変わってます。3つ目の時間帯描写です。Dメロの「夜」よりもさらに時間帯が深くなりました。
2番では「夕暮れ=オレンジ=暖色」のイメージだったのが、大サビでは「夜更け=黒・紺=寒色」のイメージを想起させ、綺麗な対比になっています。
 
 
 
 
ほろ苦いキャンディーが まだ胸のポケットにあった
ただ ひとつだけ
甘酸っぱいキャンディーが まだ胸のポケットにあるんだ
君が食べておくれ
 
 
こうして「ほろ苦いキャンディー」「甘酸っぱいキャンディー」と並列されると、キャンディー(=恋心)の持つ二面性がハッキリします。
ただひとつだけ」というのは「後にも先にも僕が恋するのは君だけ」ということ。
 
わたしは、この曲の終わり方がキャンディーが溶けていくように感じられて大好きです。
 
 
 
 
 
 
以上、『CANDY』の歌詞を曲の流れに沿って読み解いてみました。
 
この曲は終わりに向けてどんどん僕が孤独になっていく構造になっています。
・はじめは「会えると嬉しいよ」とあるように君と会えていた。
・2番で「大事なもん(=君)を失い」「夕暮れに孤独が爆発する」。
・大サビで「ひとり夜更けに孤独が爆発する」。
 
よく出来た作りだなと思います。桜井さんスゲー、スゲーとしか言えねえ(語彙が尽きた)
 
 
 
この曲のポイントとしては
 
・僕の君への恋心(=キャンディー)は「ほろ苦さ」「甘酸っぱさ」の二面性を持っている
・僕はラストに向かってどんどん孤独になっていき、恋が実ることはない
・「夕暮れ」「夜」「夜更け」という、時間帯と色のイメージの鮮やかな対比
 
といった部分でしょう。
 
決して純粋でキレイな恋愛を歌った曲ではありませんが、そのドロドロした気持ちにこそ人間くささを感じられる名曲です。
 
長くなりましたが以上、『CANDY』の歌詞考察でした。
 
こうして見ると、普通に聴いていたらサラッと流してしまうような何気ない言葉にも一つひとつ意味があるんだと、実感できました。
 
この先も色んな曲の歌詞考察をしてみたいんですがこのボリュームの物を書けるのか……とは思いますが、歌詞考察は続けていきたいです。
 
読んでいただきありがとうございました。
 
 
 

 

 

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