消えていく星の流線を

デフォで重め

欅坂46はなぜ売れた? ~SNS世代が抱えるいいね!の欲求と孤独

 

先日、Billboard Japanの上半期ランキングが発表された。

www.billboard-japan.com

 

今回のランキングは例年のBillboardとは少し違った印象を受ける。

というのも、楽曲・アーティストランキング共に1位に輝いた米津玄師、

そして楽曲2位・アーティスト4位にランクインした欅坂46の存在が大きい。

 

ということで、(米津については後述するとして)今回は欅坂46がここまでヒットした理由について考える。

 

 

 

突然だが、わたしが女子アイドルで一番好きなのは漢字欅坂46だ。

欅坂46が他のアイドルと一線を画す点は、ある種アナーキーとも言える、その楽曲にある。

わたしは、高校の時の保護者面談で親が「お嬢さん、アナーキーですよね」と言われたくらいなので、欅坂が好きなのは自分でもしっくりきている(笑)

 

しかし、あながち世間もわたしと相違なかったようだ。それはこのランキングの結果が物語っている。

 

Billboardには、AKB48乃木坂46をはじめとした48系列のグループもいくつかランクインしているが、その中では欅坂46がトップに立つ結果となった。

(2017年の年間ランキングでも、アーティスト2位・楽曲で『不協和音』4位と、48系・坂道系では欅坂46がトップとなっていた。

ビルボードジャパン 2017年年間チャート発表 | Special | Billboard JAPAN

なお、欅坂46はまだデビューして2年しか経っていない。

 

 

 

では、なぜ欅坂46はこれほど爆発的に受容されたのか?

(わたしを含めた)欅坂46のファン層はどういった人たちなのか?

 

そこから欅坂46を中心として、今のJ-POP市場の流れを自分なりに読んでみた。

 

 

 

 

 

 

サイレントマジョリティー』に見るSNS世代の孤独

 

2016年、欅坂46は『サイレントマジョリティー』で衝撃的なデビューを果たした。

何が衝撃だったかというと、彼女たちは「笑っていなかった」のだ。

平手友梨奈を中心に、軍服を着た少女たちが険しい表情で隊列を組み、マーチを刻む。

 

すげえアイドル出てきたな……と思ったわけだ。

笑わないアイドル。Winkか。

いや、Winkとも違う。あんな上品な「無表情」ではない。欅坂46は無表情なだけでなく、髪を振り乱し、顔がまったく見えないことさえあった。

 

笑わないアイドル。顔が見えないアイドル。

こういったビジュアルの面でも、彼女たちはかなり異端だった。

 

サイレントマジョリティー』は2年経った現在でも、欅坂46の活動の最大の軸となっているように感じる。

つまり、欅坂46が売れた最大の理由がこの曲から読み取れるのだ。

 

 

 

 

「いいね!」=「共感」とその副産物

 

サイレントマジョリティー』の歌詞に、「大人たちに支配されるな」とある。

ここから、この曲の主人公は「子ども」、恐らく中高生であることがわかる。

 

現代の中高生はSNS世代」だ。彼らの生活にはスマホが欠かせないものとなっている。

この世代にはもはやテレビに代わってYoutubeや動画配信サービスが人気で、それゆえYoutuberに憧れる子どもが増えた。

インスタに載せるために、流行のスイーツやスポットなどの写真を撮る子が増えた。

 

昨年の流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれたことは記憶に新しい。

 

彼らはSNSに投稿する際、「いいね!」を求める。

 

いいね!とはつまり「共感」だ。

投稿者が「きれい」と思った写真を投稿し、「きれいだな」と思った人がいいね!する。

「面白い」と思った話をツイートし、「面白い」と思った人がいいね!する。

 

みんなに共感してもらえたものは多くのいいね!が付く。

いいね!が欲しい彼らは、つまり他人からの「共感」が得られるかどうかを意識してSNSに投稿するわけだ。

 

 

 

しかし同時に彼らの心のなかには、相反する感情も生まれているはず……

 

意識的に他人からの共感を求めるということは、言い換えれば「他人に合わせる」ということだ。

だから、SNS世代はみなこぞって同じような流行りのスポットやスイーツ店に足を運び、写真を撮るのだ。その結果、ある種揶揄するような表現として「インスタ映え」という言葉が使われるようになった。

 

しかしそれは同時に、「本当の自分を押し殺している」ことにはなっていないか?

 

例えば、有名なインスタグラマーだって、インスタがなかったら話題のドーナツ屋には行っていなかっただろうし、

本当はモノトーンの服が好きなのに、インスタ映えのためにカラフルな服をわざと選ぶ子だっているかもしれない。

 

それは突き詰めれば、自分らしさを押し殺している、と言うことができるだろう。

 

SNS世代の中高生はいいね!を求め、周りからの共感を得ることを必要以上に意識し、他人に合わせて生きてきた。

そして同時に、本当の自分らしさをさらけ出せずに苦しんできた、とは言えないだろうか。

 

 

 

欅坂46の登場

 

そんなSNS全盛時代に、欅坂46が現れた。

 

ここ!

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まるでメシアか、愚衆を導くモーセのように、平手友梨奈は私たちの前に現れた。

 

サイレントマジョリティー』の歌詞は本当に捨てるところがなくて全部読んでほしいんだけど(http://j-lyric.net/artist/a05b333/l03a3fb.html)、ここではサビだけかいつまんで見ていく。

 

君は君らしく生きて行く自由があるんだ

大人たちに支配されるな

初めから そうあきらめてしまったら

僕らは何のために生まれたのか?

夢を見ることは時には孤独にもなるよ

誰もいない道を進むんだ

この世界は群れていても始まらない

Yesでいいのか?

サイレントマジョリティ

 

君は君らしくやりたいことをやるだけさ

One of themに成り下がるな

ここにいる人の数だけ道はある

自分の夢の方に歩けばいい

見栄やプライドの鎖に繋がれたような

つまらない大人は置いて行け

さあ未来は君たちのためにある

No!と言いなよ!

サイレントマジョリティ

 

SNS世代の中高生はこの歌詞を聴いて、すぐさま自身を投影しただろう。

そして、自らが「サイレントマジョリティー」——物言わぬ多数派だった、と気づいた。そういった意味で、欅坂46は啓蒙的な存在だった。

 

 

 

欅坂46は現在までの活動全体を通じて、「世間に抗え」「自分らしさを見失うな」と訴え続けていて、

この流れは『不協和音』、『エキセントリック』、そして今回Billboardランキング2位に入った『ガラスを割れ!』へと繋がっている。

 

差出人のない噂の類い

確証ないほど拡散する

 

本人も知らない僕が出来上がって

違う自分 存在するよ

──『エキセントリック』

 

この歌詞なんかまさにSNSトラブルのことを描いていて、本当の自分とSNS上の自分が乖離していることを表している。

 

 

 

そして中高生たちは、彼らが心の奥底に抱える「本当の自分をすべて出したい」という欲求を、欅坂46の曲を聴くことで解消したというわけだ。

 

先日のMステのインタビューで、「『ガラスを割れ!』に背中を押されて自分の意見を言うことができた」という、高校生の女の子がいた。

この例のように、欅坂46の支持層は、彼女たちの楽曲が訴えるメッセージに共鳴したのだ。

 

 

 

 

サイレントマジョリティー』が抱えるジレンマ

 

SNS世代の若者たちは欅坂46から「君は君らしく生きていく自由があるんだ」と学んだわけだが、それでも、急にいいね!が欲しい欲求が消えたり、SNSをやめたりはできないはずだ。

こうして彼らの中には1つのジレンマが生まれる。

 

「多くの人の共感を得て、いいね!が欲しいけど、自分らしくもありたい」

 

 

 

サイレントマジョリティー』では、振り付けを歌詞と矛盾させることで、このジレンマさえも表現してみせた。

youtu.be

 

・操り人形のような動き

57秒〜1分あたり・2分〜2分07秒あたり。

全員が手を上に引っ張られるような動きをする。そのぎこちなさはまるで操り人形のようだ。

「大人たちに支配されるな」と言いながら、誰かに踊らされているかのような振り付けが矛盾しているように見える。

 

・軍隊の行進

1分〜1分06秒あたり。

サイレントマジョリティー』を代表する振り付けがこの「行進」だ。

初めて見たときすごい混乱したよね。

「アイドルが……?軍服着て……行進してる……?」

 

軍隊には必ず指揮官がいるものだ。この行進をしている瞬間の彼女たちも、指揮官(=大人)に操られているに違いない。

この振り付けも、「大人たちに支配されるな」という歌詞とは大きく乖離している。

 

・全員での群舞

特にサビに顕著だが、サイマジョの振り付けって思いっきり「群舞」なんだよね。

「この世界は群れていても始まらない」と言いながら、めちゃくちゃ全員でぴったり同じ動きをしている。こういった部分も、歌詞と振り付けが著しく矛盾している。

 

 

 

つまり『サイレントマジョリティー』においては、歌詞と振り付けを併せてひとつのジレンマを表現しているのだ。

 

・歌詞の面では、欅坂46自身は世間に抗おうとしている

・振り付けの面では「物言わぬ多数派」のままである

 

サイレントマジョリティー』が抱える歌詞と振り付けの矛盾は、現実の若者が抱える「みんなに共感されたいけど、自分らしくもありたい」というジレンマをそのまま表しているのだ。

 

 

 

 

米津玄師『Lemon』について

 

今回のBillboardランキングを例年よりも異質たらしめているのが、各部門を総なめにし楽曲1位となった『Lemon』の存在だ。

 

以前ミスチルサブスクの記事でも触れたが、米津玄師は『Lemon』でダウンロード史上初のミリオンセールスを打ち立てた。

 

この曲を端的にいうと、「恋人を失った主人公が、その人との記憶を回顧する歌」。

失恋と孤独と寂寥の歌だ。

http://j-lyric.net/artist/a0579b7/l044ef6.html

 

 

 

2016年以前のBillboardランキングでは、AKB483代目J Soul Brothers、嵐など軒並みアイドル勢が強かった。

 

そのあと徐々にサブスクリプションサービスやYoutubeの需要が増え、CD以外に強みをもつ星野や米津といった男性シンガーソングライターが台頭していく。

2017年の年間1位だった『恋』(星野源)も、広義に「恋愛を描いた歌」といえば『Lemon』と同じかもしれない。

だが『恋』はアップテンポな王道ラブソングであり、ミドルバラードの失恋ソングである『Lemon』とは一線を画す。

 

つまり、キャッチーなアイドルソングやポップなラブソングが人気だった昨年までと比較して、失恋の孤独を歌った『Lemon』が首位であった今年のランキングは、明らかに異質なのである。

 

そして『Lemon』という曲の世界観は、ある点で欅坂46にも通じるものがある。

次にその共通点について考える。

 

 

 

 

 

『Lemon』と欅坂46の共通点

 

2組のアーティストの共通点。

それは「孤独」を歌っているという点だ。

 

欅坂46は、デビュー曲『サイレントマジョリティー』から最新曲『ガラスを割れ!』まで、一貫したメッセージを発信し続けている。

 

「自由に自分らしくいるためには、孤独であれ」というメッセージ。

 

このメッセージについて、「孤独」と「自由な自分らしさ」に分けて実際の歌詞を挙げてみよう。

 

 

 

 

・孤独

 

夢を見ることは時には孤独にもなるよ

誰もいない道を進むんだ

──『サイレントマジョリティー』

 

不協和音を

僕は恐れたりしない

嫌われたって

僕には僕の正義があるんだ

──『不協和音』

 

世間の声に耳を塞いで

生きたいように生きるしかない

だから僕は一人で

心閉ざして交わらないんだ

──『エキセントリック』

 

大人は信じてくれない

こんな孤独でいるのに

僕が絶望の淵にいるって思ってないんだ

──『大人は信じてくれない』

 

闘うなら孤独になれ

群れてるだけじゃ始まらないよ

──『ガラスを割れ!』

 

 

 

 

・自由、自分らしさ

 

君は君らしく生きて行く自由があるんだ

大人たちに支配されるな

──『サイレントマジョリティー』

 

他人(ひと)の目 気にしない 愛なんて縁を切る

はみ出してしまおう 自由なんてそんなもの

 

I am eccentric 変わり者でいい
普通なんかごめんだ 僕は僕でいさせてくれ

──『エキセントリック』

 

目の前のガラスを割れ

握り締めた拳で Oh!Oh!

やりたいこと やってみせろよ

お前はもっと自由でいい

 

おまえはもっとおまえらしく 生きろ!

──『ガラスを割れ!』

 

 

 

リスナーは、「自分らしくあるために孤独になれ」と主張したこれらの曲にシンパシーを感じ、自身を重ねた。

 

そして『ガラスを割れ!』が、『Lemon』に追随するかたちで2位となった。

世間が、「孤独」を歌った欅坂46や米津玄師に共鳴したということは、2018年のJ-POP界において特筆すべきことだ。

 

 

 

 

まとめ

 

今やコミュニケーションツールとして日常的にSNSを使う、中高生を中心とした若者たち。

その利用方法は単なるメッセージの投稿に留まらず、ユーザーは「いいね!」(=自分への共感)を多く求める流れが顕著となった。

その現れとして、2017年の流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれたことはご存じだろう。

 

他者からの共感を求めるようになった若者たちは、やがて「みんなに好かれそうなもの」を好み、マジョリティーに同調する傾向を強めた。

それはつまり、「自分らしさを押し殺している」ことに他ならなかった。

 

その時勢に一石を投じたのが 欅坂46 である。

 

欅坂46は「自分らしくあるためには孤独であれ」というメッセージを発信し続けている。

 

欅坂46の登場によって、若者たちは「自分らしさを見失ってはいないか?」「自分たちはサイレントマジョリティーだったのだ」と気づいた。

彼女たちはある種、啓蒙的な存在だったと言ってもいい。

 

だが、SNSユーザーたちはなおいいね!を求め続ける。すぐにはその欲求を断ち切ることはできず、また彼らにとって「SNSをやめること=孤立」を意味するからだ。

「闘うなら孤独になれ」というメッセージに共鳴しつつも、現実世界では孤立したくないというジレンマがここで生まれる。

 

そこで彼らは、現実では解消できない欲求を、欅坂46の曲に自己を投影することで解消しているというわけだ。

 

 

 

……と、以上がここまでのまとめ。

長いな!!毎度長くてごめんね!!

 

 

 

音楽は、時代の流れを示すひとつの指標である。

例えば、2011年の東日本大震災の少し後には、日本の未来をある種、楽観視したような……未来への不安をかき消すような曲を出すアーティストが増えた。

 

未来は そんな悪くないよ

──AKB48恋するフォーチュンクッキー』(2013)

 

夢見てた未来は

それほど離れちゃいない

 

今という時代は

言うほど悪くはない

──Mr.Children『足音 〜Be Strong』(2014)

 

音楽はその時代の人々が何を感じ、何を望んでいるのかを映し出す、鏡のようなものだとわたしは思う。

 

だから、「孤独」をテーマにした『Lemon』や『ガラスを割れ!』がヒットした今年のチャートは、今の日本人の多くが孤独を感じて生きているということの表れなのだ。

 

欅坂46が、そしてJ-POPが、どのように世間の流れを映し出していくのか。

今後、興味深いところだ。