消えていく星の流線を

消えていく星の流線を

デフォで重め

Mr.Children『君が好き』の歌詞を少しだけ深読みした。

 

昨年のクリスマス、某大型音楽特番でラブソング特集が組まれていた。

街にいた人たちにラブソングにまつわる思い出をインタビューする、という内容だった。

そこでわたしは、軽く衝撃的なものを目にした。

 

「毎年クリスマスには、ミスチルの『君が好き』を彼氏とイヤホン片耳ずつ聴いてますね」

というカップルだ。

 

……………はい。

……………はい?

 

『君が好き』……………?

 

めっちゃいい曲ですよね!君が好き!わたしも大好き。だけど、

この曲は一筋縄じゃいかないラブソングだと思う。

 

具体的には「不倫の曲だと思ってる。

 

どこがどうしてそういう曲なのか、テレビに解説垂れたい衝動に駆られ……

そしてカップルの行く末がめちゃめちゃ心配になった(笑)

 

そのカップルがあまりに気になったので(笑)、今回は『君が好き』という曲がいかに不倫の曲かということを読み解いていきます。

なんか前回の記事も不倫の曲について書いた気がするけど別にそういう性癖なわけではない。

 

読んでくれ!!なあ!!M○テのインタビューのカップル!!

 

 

 

『君が好き』のキーワード

 

この曲の歌詞には、陰に陽に不倫を示唆するキーワードがいくつか出てくる。

まずはそのキーワードを拾ってみていく。

 

 

① 「月」

『君が好き』の歌詞において、「月」は2回登場する。

それだけでなく、この曲のジャケットイラストにも月が印象的に描かれている。

 

君が好き

君が好き

 

 

 

女性のものらしき手が三日月を掴もうとしているこのイラスト。

ここで「月」は中央に配置されており、イラストの主役であることは、誰の目にも明らかだと思う。

これは、『君が好き』という曲のなかで「月」がとても重要な意味をもつことの証拠でもある。

 

 

 

この曲において「月」のモチーフが重要であるとわかったところで、歌詞に出てくる「月」がどのようなことを表すのか考えていく。

 

個人的解釈として、ラブソングの歌詞に「月」が出てきたら、まず「I Love You」と変換してみると、ストンと腑に落ちることが結構ある。

 

夏目漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳した逸話は有名だ。

じつはこの話は文献に残されているなどというわけではなく、都市伝説に近いものなのだが……

それでもこの話が語り継がれているのは、この美しく奥ゆかしい表現に共感・共鳴した日本人が、ある程度いたからだろう。

 

『君が好き』に出てくる「月」も、「I Love You」の隠喩であると考えてみると意外としっくりくる。

 

 

もしもまだ願いが一つ叶うとしたら…

そんな空想広げ

一日中ぼんやり過ごせば

月も濁る東京の夜だ

 

歌い出しで「月」が登場する。

この曲の中で「僕」が見る「月」は濁っている。

つまり、僕から君に対する「I Love You」の気持ちは、単にキレイなものではなく、濁ったもの。

 

初っぱなからすでに、「僕」と「君」の恋愛はいわゆる不純なものだということが仄めかされている。

 

 

歩道橋の上には 見慣れてしまった

濁った月が浮かんでいて

 

Dメロの部分で「月」が2回目の登場。

ここでも、僕から君への「I Love You」は濁っている。

 

 

 

「僕」は曲中で2回、「月」を見上げるシーンがあるが、そのいずれも月は濁って見えている。

 

「月」が、君への「I Love You」の隠喩であるとすれば、2人の恋愛は

【濁っている関係=不倫関係?】

と想像できる。

 

 

② 「夜の淵」

サビでは「僕」が君と待ち合わせしている様子が描かれる。

そのとき、時間帯描写として「夜の淵」という表現が用いられている。

 

夜の淵 アパートの脇

くたびれた自販機で二つ 缶コーヒーを買って

 

夜の淵 君を待ち

行き場のない 想いがまた夜空に浮かんで

 

二人は「夜の淵」にしか会えないような関係である。

これはただの夜ではなく、言い換えれば夜の「深淵」、つまり誰も出歩いていないような深夜ということだ。

 

しかも待ち合わせの場所は「アパートの脇」。

この「脇」っていうのもまた、素晴らしいワードチョイスだと思う……。2人が建物の壁面に沿うように、ひっそりと会っている情景がよく浮かぶ。

せっかく、僕または君どちらかのアパートまで来ているのに、部屋ではなくその「脇」……つまり建物の陰に隠れるようにして会わなければならない。

 

「僕」と「君」は深夜、誰にも見つからないアパートの陰でしか会うことができない。

つまりこの2人は、人目のある場所では会えない、人に見られるとマズイ関係だということだ。

 

 

③ 「汚れていってしまう僕ら」

ここで示したキーワードの中で、不倫関係が読み取れるものとしてこれが最も直接的でわかりやすいのではないかと思う。

 

歩道橋の上には 見慣れてしまった

濁った月が浮かんでいて

汚れていってしまう 僕らにそっと

あぁ 空しく何かを訴えている

 

「僕ら」(=「僕」と「君」)は汚れていってしまう。

 

これはもちろん物理的に、洋服が汚れるとか泥がハネるとか言っているわけではなく、彼らの「精神が」どんどん汚れていく、また彼らが「社会体裁的に見て」いわゆる汚らわしい関係である……ということ。

 

 

 

以上の3つのキーワードから、僕と君が不倫関係にあることがわかったかと思う。

その上で歌詞全体を見ていくと、『君が好き』という曲を、違った面から聴くことができるんじゃないだろうか?

 

 

 

君が好き

作詞・作曲:桜井和寿

 

もしもまだ願いが一つ叶うとしたら…

そんな空想広げ

一日中ぼんやり過ごせば

月も濁る東京の夜だ

 

もしもまだ願いが一つ叶うとしたら…

この「願い」とは何だろうか?

(まあ、『君が好き』というタイトルから君関連であることは想像できるが、どうせなら歌詞の前後から考えてみる)

 

この「願い」について、一日中ぼんやりと考えている「僕」。そして、その一日の終わりに見上げる「月」は濁っている。

「月」は「君へのI Love You」を表すので、僕が一日中考えていたのは「君」のことなのだと暗に表されている。

 

しかしこの二人の関係は濁った不倫関係。

つまり、君のことを一日中考えていたから、僕は月が濁って見えてしまう。

月が濁っているのではなく、実は濁っているのは「僕の心」の方ということだ。

 

 

そしてひねり出した答えは

 

君が好き

僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい

 

一日中考えた僕は、「君が好き」だという答えを「ひねり出す」。

ひねり出すの!

なんか思わず急にブルゾンちえみ風になっちゃうけど!ひねり出すの!

君が好き!大好きー!じゃなくて、僕は、悩んで悩んで散々考えた末に「それでも君が好き」だと答えを出す。

なんでそんなに悩んでいるのかという理由が、「君は本当は好きになってはいけない人だから」だ。

 

 

夜の淵 アパートの脇

くたびれた自販機で二つ 缶コーヒーを買って

 

夜の淵 アパートの脇」については前述。

 

2人は、一緒にいる時でも缶コーヒーくらいしか飲めない。

何故かと言うと一緒にカフェにも入れないような関係だからだ。本当はカフェでお茶したり、レストランで普通にご飯を食べたりしたいけど、できない。

 

それは、2人が一緒にいるところを誰かに見られてはいけないから……

 

 

僕の手が君の涙拭えるとしたら

それは素敵だけど

君もまた僕と似たような

誰にも踏み込まれたくない

領域を隠し持っているんだろう

 

誰にも踏み込まれたくない領域

これを、それぞれの「家庭」と考えることができる。

 

君も、僕も、「誰にも踏み込まれたくない領域」=家庭を持っている。

つまりこの関係は W不倫 だということ!

 

 

君が好き

この響きに 潜んでる温い惰性の匂いがしても

繰り返し 繰り返し

煮え切らないメロディーに添って 思いを焦がして

 

君が好き」という響きに「温い惰性」が潜んでるということで、

僕は君に、飽きるほど「君が好き」と言ってきたらしい。

つまり僕と君の付き合いはある程度長いということがわかる。

 

 

歩道橋の上には 見慣れてしまった

濁った月が浮かんでいて

汚れていってしまう 僕らにそっと

あぁ 空しく何かを訴えている

 

前述。

 

 

君が好き

僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい

夜の淵 君を待ち

行き場のない 想いがまた夜空に浮かんで

君が好き 君が好き

煮え切らない メロディーに添って 想いを焦がして

 

 

 

いかがでしたか?

結構ドロドロしてるでしょ?

これでもまだ、クリスマスにカップルで聴く気になれますか?(誰)

 

『君が好き』という、ど真ん中直球ストレートな、潔いとすら言えるタイトル。

しかしこの曲の本質は、きれいな恋愛などではない。

この、タイトルと歌詞との矛盾、ねじれ、ひねくれ。

Mr.Childrenのそういう部分が本当に好きだ。

 

歌詞はちゃんと読もうな!

間違ってもこの曲を結婚式で流しちゃだめだぞ!