消えていく星の流線を

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デフォで重め

消えない虹になるために ~アイドリッシュセブンにおける「永遠」とは?

 

「12人は光を灯し、永遠への道へ。」

 

2018年夏、『アイドリッシュセブン』はリリース3周年を迎えた。
その特設サイトで打ち出されたのが、この言葉だ。


このサイトからは、『アイドリッシュセブン』というコンテンツが今後、「永遠」をキーワードに展開されていくことが読み取れる。

 

じゃあその「永遠」ってのは、具体的にどうなることを言っているんだい?
まあそう思うでしょう。わたしも思ったよ。
だってものすごく抽象的でふわっとしてるじゃん。「永遠」なんて言葉は。

 

ということで今回は、アイドリッシュセブンが向かおうとしている「永遠」とはアイドルたちが具体的にどうなることを指すのか、推測する。

 

  

 

 

ストーリー中の「永遠」

 

アイドリッシュセブンのストーリー中では、「永遠のアイドル」というキーワードが出てくる。
今回の3周年のキャッチコピーは、このストーリーと関連づけたものである。

 

また「終わらないアイドル」という言葉も出てくるが、これと「永遠のアイドル」は使い分けられている。

具体的には

 

・九条天
・九条鷹匡
・姉鷺カオル

 

この3人のセリフなのだが、この3人の「永遠」のとらえ方に微妙な違いがあるということだ。

 

以下、そのセリフ。

 

天「一時代くらい誰でも名を残せる。難しいのは永遠だ。永遠になるには伝説が必要。ゼロみたいな」(1部11章2話)

「永遠になるには伝説が必要」
このセリフがすごい重要。

 

天は「アイドルの永遠=伝説になる」ことだととらえている。

 


そして次に「永遠」について語られるのは2部を飛ばして3部。

 

天「姉鷺さん、理想のアイドルってなんだと思いますか?」


姉鷺「決まってるじゃない。終わらないアイドルよ。アイドルは夢なの。夢の終わりなんて誰も見たくない。伝説なんて賞賛よりも、ある日突然姿を消したりしないアイドルの方がいい。日本一のトップスターじゃなくたって、顔に傷があったって、声が出なくたって、終わらせないでくれたらそれでいいのよ。だけどその夢を叶えるのが一番難しい」(3部14章2話)

姉鷺は「伝説なんて賞賛よりも~」と言っていて、「永遠になるには伝説が必要」という天の考えを、実は真っ向から否定していることがわかる。

 

姉鷺は「アイドルの永遠=ずっと活動を続けること」だととらえている。

 

そして作中では、

・伝説として語り継がれるアイドル = 永遠のアイドル
・活動を続けるアイドル = 終わらないアイドル

という風に言葉を使い分けている。

 


さらに九条鷹匡はというと。

 

九条「ファンを止めることはできないよ。それこそがファンの持つ力だからね。了も八乙女くんも、それが分からないまま世の中の人々をコントロールしようとしている。本当は真逆なのに。大衆が、アイドルを理想のアイドル──終わらないアイドルに近づけるためにコントロールしているんだ」(3部18章4話)

九条のセリフにも「終わらないアイドル」と出てきた。九条の「永遠のアイドル観」については、姉鷺的考えに近いと思う。

たとえば、九条はゼロの活動が終わったことを「ゼロに裏切られた」と言って憎んでいる。
これは裏を返せば、「アイドルは何があってもずっと活動するべき」という願望からくるものだ。

 


また、こんな天のセリフもあった。

 

天「隕石が落ちて世界が絶望している時にも、笑って歌うのがボクらの仕事。それを九条さんが教えてくれた」(2部5章2話)

九条は「アイドルはどんな時も活動を続けるべき」と考えており、天もそれを正しいとして受け入れた。
だが天は「永遠になるにはアイドル本人が活動し続けるだけではダメで、伝説にならなければ永遠にはなれない」と考えている。そこにおいて、天は九条より一段上だと言える。

 

 

よって、かなり簡略化すると次のような図式が見える。

 

姉鷺のアイドル観=九条のアイドル観【永遠とは活動し続けること】
≠天のアイドル観【永遠とは伝説になること】

 

 


「伝説」になるには?

 

じゃあ、天くんが言ってた「伝説になる」ってどういうこと?

 

 

伝説は語り継がれる

 

普段から、◯◯くんダンス上手いよね!とか、この前のライブのこの曲めっちゃ感動した~とか、アイドルへの褒め言葉を聞く機会はよくあると思う。

 

そういった他愛ない褒め言葉と「伝説」が異なる点として、
伝説は「語り継がれる」ということだ。

 

多くの人を感動させ社会現象となったアイドルは、活動を辞めても、失踪しても、死んだ後も、「こんなにすごい人がいたんだよ」と語り継がれる。
「百恵ちゃんが好きだった」とか、「光GENJIはすごい人気だったんだよ」とか、親から昔ファンだったアイドルやアーティストの話を聞いたことがある人は多いんじゃないだろうか。

 

まさしくそれが「伝説になる」ということだ。

 

生身の人間である限り、アイドル本人は必ず死んでいなくなる。だが伝説のアイドルは、親から子へ、子から孫へ……と語り継がれていく。

だから綿々と、永遠に、そのアイドルは生き続けることになる。

 

 

記憶と永遠

 

「人は二度死ぬ」とはよく言われたものだ。

一度目は命が尽きた時。
二度目は生きている人から忘れ去られた時。

これを題材にしたのが、日本では今年3月に公開されたピクサー作品『リメンバー・ミー』だった。

 

舞台は、死んだ人たちが骸骨の姿となって暮らす「死者の国」。
彼らは現世で死ぬと「死者の国」にやってくるが、現世で彼らのことを覚えている人が一人もいなくなると、「死者の国」からも消えていなくなる──つまり「二度死ぬ」のだ。

 

逆に言えば(これは映画劇中では指摘されていなかったが)、
語り継がれていき、誰かの脳に「その人がいた記憶」がある状態が続けば、死者の国では永遠に生きられる、という理屈になる。

 

 

アイドリッシュセブンにおける「永遠」も、これと同じことを言っているのではないか。

 

すごい功績を残したアイドルが伝説になる



次の世代へと語り継がれる

誰かしらの記憶に残る

次の世代へと語り継がれる

誰かしらの記憶に残る

次の世代へと語り継がれる…………

 

この円環的構造が生まれ、子世代や孫世代、さらにその下の世代……と、そのアイドルの記憶は延々受け継がれていく。

つまり肉体は死んでも、人々の記憶の中で永遠に生きられるというわけだ。

 

【次世代まで語り継がれ、そのアイドルの記憶が受け継がれてていくこと】

これが「永遠のアイドル」になるということだ。

 

 

 陸の願いとは?

 

一織「私にあなたをコントロールさせてください。私を嫌って、憎んでも構いません。だけど私を疑わないでください。あなたの願いを叶えるために」

陸「オレの願いがわかるんだ?」

一織「当然でしょう」
(3部18章5話)

 

3部で唐突に出てきた「陸の願い」。
わたしはこの「願い」こそ、先に説明した【永遠のアイドルになること】ではないかと思っている。

 

その根拠はIDOLiSH7の曲の歌詞にある。

以前の記事でも述べたとおり、アイナナの登場楽曲にはキャラたちの人生・背景が反映されている。

 

 

そして、「センター次第でそのグループのカラーが決まる」と一織が言っていたことから(1部3章2話)、
アイナナの曲の歌詞はそのままセンターである陸の考えや、人生を反映していると考えてよい。

 

Feel to the life!(Yeah!)
Feel to the live!(Go!)
──MONSTER GERATiON

「命を感じて ライブを感じて」
「live」はここでは名詞なので、音楽イベントの「ライブ」という意味になる。

 

生まれた意味を声に乗せるよ
──MEMORiES MELODiES

ここは陸のソロパート。

この歌詞こそ、陸の真意なのでは!?!?
なぜかというと、ここがメロディーも歌詞も、他のところに比べて切実すぎるから。

 

モンジェネの歌詞から、IDOLiSH7は 「歌うことに命を感じている」。
メモメロの歌詞から、陸は 「歌うことが自分の生まれた意味だと思っている」。

 

つまり七瀬陸は
「歌で自分の生きた証を残したい」
と考えているのでは?

 

そしてこれは、「伝説として人々の記憶に刻まれる」=「永遠になる」ことともほぼイコールだ。


【七瀬陸の「願い」とは、歌で自分の生きた証を残し、永遠になること】
だと考える。

 


陸は幼い頃から病気を持っており、入院生活を送っていた。
病院では幽霊を見ることもよくあったという。
陸にとって、「死」は昔から身近なものだったのだ。

だからこそ「生きている証を残したい」「自分のことを覚えていてほしい」という願望は人一倍強いのかもしれない。


「12人は光を灯し、永遠への道へ。」

 

「永遠」はあたかも「12人」の願いであるかのように謳われているが、実はこれを一番強く願っているのは七瀬陸だということだ。

 

 

虹と流星と永遠と

 

IDOLiSH7はストーリー中で虹・流れ星になぞらえられている。

 

「初めてのステージの上で、7人はのように、のように、きらきらと眩しく輝いていた」(1部2章5話)

 

「七色の光が束になってになるように、オレたちのハートが同じものを目指してひとつになっていく」(1部19章3話)

 

九条鷹匡「i7は今以上に売れるが長くは続かない。流星のように一瞬で燃え尽きる」(3部2章3話)

 

陸「オレたちの歌に誰かの楽しい思い出や、誰かが幸せな物語が繋がってるなら、オレたちが歌うたび、楽しい気持ちや幸せな気持ちをリフレインさせることができる。真っ暗な夜空に、流れ星を降らせるみたいに。オレたちは、にも、にもなれる」(3部15章2話)

 

一織「(陸に対し)流れ星を降らせて、を超えてください」(3部18章5話)

 

 

わたしたちは、虹や流れ星を永遠に見ていることはできない。
流れ星は一瞬で消えてしまうし、
虹が出てから消えるまで、ふつうは数分~数十分。世界で最も長く持続した虹でも約9時間だったそうだ。

台湾で記録された『8時間58分』の虹 その時、大気中では何が起こっていたのか? | Guinness World Records

 

だから、「虹・流れ星」とイコールで繋がれるIDOLiSH7自身も、物理的にはいつか消えてしまうはずなのだ。

 

だが、虹や流れ星を見ることができた人たちは、その美しさを忘れないだろう。
モノそれ自体は一瞬で消えてしまっても、素晴らしいものに出会えた「感動」「記憶」は永く残る。


IDOLiSH7もそんな風に「記憶」に刻まれるグループなのだろう。

そして「感動」「記憶」は語り継がれ、永遠になっていく……というわけだ。

 

 

余談。
このブログ名「消えていく星の流線を」はジャニーズのほうの自担のソロ曲の歌詞からいただいたものだ。

 

人間は儚い。たった100年足らずでみんな死んでしまうのだから。
アイドルはもっと儚い。彼らがいつステージから消えてしまうかなんて、誰にもわからないのだから。
つい先日も、タッキー&翼が解散を発表した。こんなこと誰が想像できた?

彼らが生きていて、芸能界に入って、オーディションに受かって、今ステージに立っている。それは天文学的確率だと思うのだ。

そんな儚さが「消えていく星の流線」に似てはいないか。
そう思って、この歌詞を取らせていただいた。

 

 

 

平成最後の夏とかいうエモエモのエモなタイミングで、「永遠」とかいうキング・オブ・エモなテーマを撃ち込んできたアイドリッシュセブン

今回の話に則れば、アイドリッシュセブンのアイドルたちはいつか必ず死んでしまうけれど、わたしたちが覚えていることで彼らは「永遠」になれる。

 

だからアイドリッシュセブンのこと、ずっと忘れないでいような。

 

こんなに楽しいゲームがあったってこと。推しがこんなにもかわいくてかっこいいってこと。アイドリッシュセブンが大好きだってこと。

 

忘れないでいような。

 

それこそが彼らを「永遠」にするのだから。

 

 

 

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