消えていく星の流線を

消えていく星の流線を

デフォで重め

アイドリッシュセブンの再建学

 

この記事では東日本大震災京アニさん放火事件のお話をします。苦手と感じる方はこちらでお引き取りいただき、どうかご自身のメンタルをお護りください。

 

 

今回もアイドリッシュセブン 2nd LIVE 「REUNION」の話から始まります。
わたしの推しである斉藤壮馬さんが、ナナライに関してエモ散らかすお話をされていたので、その言葉から。

 

ライブ前日と1日目の後に、自分はあの場所にどうやって立つことができるんだろうって結構悩んでしまったというか、考えてた。で、天くんの昔のセリフを見返してたんです。

怖いのは失敗することじゃない、失敗したくないと思うことが怖いんだ。大事なのはミスした後にどう立ち上がるか

というセリフがあって。収録した時の感覚とはまた違って、まるで天に自分が言われているみたいな気持ちになった。
斉藤壮馬石川界人のダメじゃないラジオ 2019/7/24放送)

 

ちなみにこれはサイドストーリー(1部11章3話・ボイス無)の天くんのセリフだった。
アニメでは11話に該当するが、このお説教シーンはカットされている(=斉藤さんはこのセリフを入れていないはず?)。

 

こんなセリフ確かにあったな、と思って、そこからいろいろ考えました。
思い返してみると、アイドリッシュセブンは全体を通して「どん底から這い上がる」ような流れが多い、ということに気づいた。というわけで、今回はそんなお話をします。

 

そしてこの文章は、祈りにも近い希望を込めて書きました。どうぞ最後まで読んでやってください。

 

 

 

例えば 星空 見えないそんな夜でも

 

アイドリッシュセブン』のアイドルたちはそれぞれ挫折し、そこから再起していく……ということは、ジャニヲタが沼にハマった記事 などでも書いた。

そのパターンを、4グループそれぞれにまとめた。

 

IDOLiSH7

アイナナは主人公グループだけあって、一番挫折の回数が多い。

 

・ファーストライブ
お客さんがたったの9人
→2回目のライブでは満員に

 

MEZZO”と分断
アイナナより先に環・壮五がMEZZO”としてデビュー。アイナナ解散の危機に。
→7人で無事デビューし、折り合いがつく

 

・NATSU☆しようぜ!事件
日向アキヒトがアイナナのデビュー曲になるはずだった『NATSU☆しようぜ!』を盗み、TRIGGERの曲としてリリースされる
→夏の島音楽祭で10人で歌い折り合いがつく

 

・センター交代
陸の体調悪化により、『Perfection Gimmick』で一織とセンター交代
→ゴタゴタを乗り越え『RESTART POiNTER』で陸センターに戻る

 

・ナギ不在
ナギがノースメイアに連れ帰される
→アイナナ、ナギ取り返し中なう

 


また、アイナナのキャラクターたちは個人でも挫折を経験している人が多い。

・一織:ミューフェスの失敗・センター交代時のプレッシャー
・大和:隠し子バレで自暴自棄
・三月:アイドルを目指すもオーディションに落ちまくる
・環:妹・理と生き別れ。やっと再会するも拒絶される
・壮五:大企業の会長子息だが勘当される
・ナギ:ノースメイア第二王子として自由のない生活を強いられる
・陸:病気・センター交代

 

 

TRIGGER

なう進行形で立ち直り中。

 

月雲了の策略によって、芸能界のどん底に堕とされたTRIGGER。
そんな最中でTRIGGERの心情をよく映していたのが『願いはShine On The Sea』という曲でした。

 

深く冷たい海の底からも 必ず上がってみせる

TRIGGERはどんなに追い詰められても、その気高い意志を絶対に捨てなかった。

 

そんな彼らは今、舞台『クレセント・ウルフ』のオーディション合格により、這い上がるための取っ掛かりをつかんだところだ。

 

 

Re:vale

Re:valeの話は千・万理時代にさかのぼる。

 

万理が顔にケガ→失踪→千の自暴自棄

これがRe:valeの「どん底」。

 

そして、

百が相方になりRe:vale新生

この部分が「立ち直り」。

 

単純に考えるとそこまででRe:valeの「立ち直り」は終わりなのだが、厳密にはまだふたりともわだかまりを抱えている。
千・百で「『未完成な僕ら』どうするのか問題」を解決してはじめて、Re:valeは完全に立ち直ったと言えるだろう。

 

 

個人では

・百:サッカー選手を目指していたがケガで挫折
・千:万理失踪により音楽を辞めようとしていた

 

 

ŹOOĻ

なう進行形で立ち直り中。

 

月雲了のいわばリーサル・ウェポンとして、TRIGGERの妨害に加担してきたŹOOĻ。
彼らは今、自分たちがしてきたことの重さに気づき、償いの方法を模索し始めたところだ。

 


個人では

・悠:九条鷹匡に見捨てられる
・トウマ:以前所属していたグループ、NO_MADの解散
・巳波:慕っていた(ほとんど依存に近い)桜春樹の失踪
・虎於:挫折経験なし。強いていえば今が人生最大の挫折

 

 

 

 

スクラップ・アンド・ビルドの国

 

2016年の大ヒット映画『シン・ゴジラ』。その作中、竹野内豊さんの印象的なセリフでこんなものがある。

スクラップ・アンド・ビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる


シン・ゴジラ』におけるゴジラは、東日本大震災の隠喩としての存在。この映画は、実際に起こった「あの」未曽有の大災害へのアンサーを込めた作品だった。

 

日本という国は世界でも類を見ない地震大国である。忘れた頃に大地震が起きては、数百、数千という人が死ぬ。
近年では異常気象が原因で、天候による災害も増えている。それは昨年・今年とちょうどアイドリッシュセブンのライブの季節とバッティングしていたため、決して他人事ではないと感じている。

 

人々の街が、故郷が破壊されては、多くの人たちが力を合わせて復興する。それを繰り返して、この国は今日まで生きている。

 

そして日本人には、この「スクラップ・アンド・ビルド」精神が遺伝子レベルで根付いているのだと思う。

日本語という言語が受け継がれていくのと同じように。まるで通奏低音が鳴るように。

 

 

さて、この竹野内豊のセリフと似たものが、アイドリッシュセブンにもいくつかあったのです。

 

音晴「僕らは年を取った分、挫折も失敗もたくさん知ってる。そこから立ち上がるための方法もね。これを若い子たちに教えることが、おじさんたちの1番大事な仕事さ」
(1部9章1話サイドストーリー)

 

大和「やれることをやりゃいい。MEZZO“のデビューだって、最初は誰も望んでなかったじゃないか。だけど、今は何とかなってる。なんとかやって来たろ、俺たちは……
(2部8章1話)

 

ちなみに、先に斉藤さんが言っていたセリフを細かく起こすとこうなる。

天「どんなに優れた人間だってミスはする。ミス自体は大した問題じゃない。ミスをした時、どう立ち上がるかだ


一織「失敗しても動揺しないためには、どうすればいいですか?」


天「自覚することだよ。キミの役目、キミに求められていることを。君が100回ミスしたとしても、キミの笑顔で幸せになってくれる人がいる。キミの欠点が100個あっても、キミの長所ひとつで救われる人がいる。100の欠点を埋めて、ミスをしない優秀な人間になる必要はない。それはロボットで人じゃない。キミだけにできることをして。君が幸せにできる人を、キミのやり方で幸せにすればいい。失敗は怖がることじゃない。失敗を怖がることこそ、怖いことだ。成功よりも失敗の方が、胸に深く突き刺さってしまう。心が囚われれば、体が石のように重くなる。それでも、飛び方を忘れないで。勇気をなくさないで。キミの失敗を笑う人は、誰の失敗を見ても幸せになれる。キミの成功を喜ぶ人こそ、キミしか幸せにできない人たち。キミの役目はそこにある。どんな時も、そちらをしっかり見つめて」


ナギ「九条氏はなぜ、そのように考えるように?」


天「ただの経験だよ。子供と一緒。たくさん転べば、その分立ち上がるのが早くなる
(1部11章3話サイドストーリー)

 

アイドリッシュセブンでは、「失敗の仕方」ではなくそこからの「立ち上がり方」が重要だ、としている。
つまりアイドリッシュセブンは、日本人に通底する「スクラップ・アンド・ビルド」精神を土台に練られているのでは? と思う。
だからわたしたちの性へk……いやいや、心にグサッと刺さる、というわけだ。

 

地味にスゴいのが、アイドリッシュセブンの方が先なんですよ、これ言ったの。国家規模か、ひとつのアイドルグループの話か、という点が違うだけで。

 

 

 

そして今、わたしたちのスクラップ・アンド・ビルド精神がまた試されようとしている。ただし天災ではなく人災だったという点には、なんとかアンガーをマネジメントしようと試みてはいるが、どうにも怒りを禁じ得ない。

 

アニメ界が著しく脅かされる出来事に直面した今、「人は必ず立ち直ることができる」と教えてくれたのがアイドリッシュセブンというゲーム(アニメ)・コンテンツだったことは、救いと言うべきか、それとも皮肉なのか、わたしにはまだよくわからない。
わかる必要もないと思う。
もしかしたらこれは、名前も付けられないほど複雑な感情かもしれない。

 

あの時まで時間を戻したくて仕方がない。時間を戻したい、そしてわたしがその場まで行って犯人を止めたい。あれから数日間は、それ以外のことを考えることができずたいへん腐心した。
でも、時間は戻らない。止めることもできない。

 

あまりにも残酷だ。

 

 

 

わたしたちは何があっても、前に進むことを強制される。止まらない時間の流れによって。つまりは「立ち直らざるを得ない」。
生きている限り人間は、強制的に、いつか立ち直らされてしまうのだ。

 

わたしたちは、どうせまた立ち直るだろう。
アイドリッシュセブンを見て、けいおん!や、Free!や、ヴァイオレット・エヴァーガーデンを見て、その他たくさんの物語に触れて。

 

そして時に、あの痛みを忘れてしまったのか? と感じるかもしれない。
でもそれは違う。

 

この傷がかさぶたになって、いつか綺麗に治ったとしても、怪我をしたときの痛みは絶対に忘れない。
その人たちが生きていたという痕跡が、作品の中にある。
いなくなってしまったという傷跡が、これからの作品の中で突きつけられる。
そうして思い出すだろう。どこに怪我をしたのか。どのくらい痛かったのか。

 

それでいい。
わたしたちが思い出す痛みこそが、その人たちが生きていた証になる。

 

大事なのは「どう立ち上がるか」。
だから世界一のアニメをまた作ってくれると、信じるしかない。
今はそう言って、自分自身を、そしてここまで読んでくださった皆様を、微力ながら鼓舞してこの話を終えようと思う。

 

 

 

心配ないのさ この歌が 照らしている


アイドリッシュセブンは人生の真理だなと思うことが多々あるけど、その一番の要素は「挫折とそこからの復活」だ。

 

アイドリッシュセブンから得られるものは一時の享楽だけではない。大袈裟な、と言う人もあるかもしれない。だけどわたしは、アイドリッシュセブンから「生きるための力」を得られると思う。

 

元来エンターテインメントには、人を生かす力があると思う。
生きることは面倒くさくて、大変で、思い描く以上にとても難しい。
でも、新章を読みたい、新曲を聴きたい、ライブに行きたい、新しいグッズが欲しい……それがあることで、途端に「生きたい」という欲望が湧いてきてしまうような。そういう力。

 

わたしたちはこのたったひとつのゲームと出会ったことで、これから長い人生を生きていくうち「あの時学んだことに救われた」と思うことが、きっとたくさんある。
プレイヤーだけでなく、中の人もそうだったように。

 

もし、もしも、負けそうなことがあったら、心の中で「ショートコント」と唱えた後に、九条天くんの言葉を思い出そう。

 

失敗は怖がることじゃない。失敗を怖がることこそ、怖いことだ
「ミス自体は大した問題じゃない。ミスをした時、どう立ち上がるかだ
たくさん転べば、その分立ち上がるのが早くなる

 

 

 

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