消えていく星の流線を

消えていく星の流線を

デフォで重め

嵐『Love so sweet』が今さらグッときたので考えてみた。

 

言わずと知れたジャニーズグループ・嵐の、言わずと知れた名曲『Love so sweet』

2007年はじめにリリースされたこの曲は、当時から現在までジャニヲタ・一般人問わず人気を集め、今や彼らの代名詞とも言える1曲になった。

 

明るいのに、どこかが少し不思議。青くさくて、いつ覚めるかわからない夢のよう。

そんな「嵐らしい」リリックと曲調にくわえ、大人気ドラマ『花より男子2』の主題歌だったこともこの曲をスターダムに押し上げた。

 

わたしも大好きな曲だ。いつ聴いても新鮮に「良い曲だなあ」と感じさせられる。名曲って多分、そういうものだ。

 

https://j-lyric.net/artist/a000eac/l009c3b.html

 

そんな名曲のリリースから15年。

先日、ふとテレビを観ていると、歌詞の一部を見て曲名を当てるというクイズが放送されていた。

そこに出てきたとある曲が、わたしの中で『Love so sweet』とつながった。

ああ嵐ってすごい。音楽っておもしろい。それを再認識した出来事だった。

そこで今回は、何百回(?)と聴いてきたこの曲を、今さらだが深掘りしてみる。

 

 

『Love so sweet』にちりばめられたあの大物アーティスト

 

さて冒頭で話した「とある曲」とは、サザンオールスターズいとしのエリーである。

https://j-lyric.net/artist/a000623/l0067b5.html

 

歌詞クイズで気づいたのは、この2曲に出てくるワードがいくつも被っているということだ。

 

・俺にしてみりゃ これで最後のlady/笑ってもっとbaby

・エリー my love so sweet

・あなたがもしもどこかの遠くへ行きうせても

 

──いとしのエリー

 

・笑ってもっと最後のLady

・Love so sweet

・ふたりが遠くへ行っても

 

──Love so sweet

 

そこで15年越しにわかったのが、『Love so sweet』はサザンオールスターズをオマージュしている という説だった。

 

 

また、同じくサザンのTSUNAMIに通じる歌詞もいくつも見受けられる。

https://j-lyric.net/artist/a000623/l00097a.html

 

・あんなに好きな人に 出逢う夏は二度とない

・夢が終わり目覚める時 深い闇に夜明けが来る

・鏡のような夢の中で 微笑をくれたのは誰?

 

──TSUNAMI

 

・こんな好きな人に 出逢う季節二度とない

・傷ついた夢は 昨日の彼方へ/明けない夜はないよ

・輝いたのは鏡でも太陽でもなくて/あの涙ぐむ雲のずっと上には微笑む月

 

──Love so sweet

 

涙のキッス栞のテーマでは「想い出」という表記も見られる。

https://j-lyric.net/artist/a000623/l00f13f.html

https://j-lyric.net/artist/a000623/l007a02.html

 

・想い出ずっと ずっと忘れない空

 

──Love so sweet

 

桑田佳祐名義の波乗りジョニーは『Love so sweet』と被る単語のオンパレードだ。

https://j-lyric.net/artist/a005366/l000dcd.html

 

・誓う孤独の太陽が 涙で滲む

夢を叶えてくれよと 星に願いを込めた日も

二人の海に夜明けは来ないと 君は気付いてた

 

──波乗りジョニー

 

・輝いたのは鏡でも太陽でもなくて/あの涙ぐむ雲のずっと上には微笑む月

・傷ついた夢は 昨日の彼方へ/きっとそっと願い届く

・明けない夜はないよ/君だと気付いたときから

 

──Love so sweet

 

 

ラブソーサザンオマージュ説、もしかしたら周知の事実?と思って調べてみたが、ほとんどヒットしなかったのであまり知られていないのかな。

見つけられたのはこちらの記事くらいだった。

 

これによると、

Aメロのキーボードからリバーブの効いたカスタネット、ストリングスの使い方が『希望の轍』と『波乗りジョニー』で、(中略)全編サザンオマージュに満ちた傑作

である。

 

ハイハットとピアノから始まるイントロが確かに似ている。

 

こちらも、イントロがハイハットとピアノで似ている。

また、Bメロのリバーブがかかっているカスタネットがそっくり。

いわゆるPPPHの「H(ハイ!)」の部分で鳴っているやつですね。

 

 

そもそも「Love so sweet」って文法的にあまり見ない表現だから、いとしのエリーを聴いて「へえこの曲、Love so sweetって入ってるんだ」とは思ってたよね……。

 

それに、「輝いたのは鏡でも太陽でもなくて君」?

「こんな好きな人に 出逢う季節二度とない」?

「笑ってもっと最後のLady」?

なんか日本語としてちょっとおかしい、違和感のある歌詞だなと感じていた。

それは、既存曲のオマージュがこれでもかと詰め込まれているためだったのだろう。

 

 

『Love so sweet』はちょっぴりかなしい

 

『Love so sweet』が超ハッピーラブラブなラブソングだと思っている人は多いのではないだろうか(わたしも最近までそうだったのだが……)。

ところが歌詞をよく見ると、そうでもないことがわかってくる。

 

なんといってもサビの始まりが「想い出ずっと ずっと忘れない空」だ。

想い出」なのだ。2人は想い出にすがっている状態。

そして「ふたりが離れていっても」と続く。

幸せ絶頂のカップルが、「この先、ふたりが離れていっても……」と語るとは考えにくい。

 

・どんな辛い夜も くじけそうな誓いでも

2人は「辛い夜」にいる。そして(恐らくは「ずっと愛するよ」という)誓いくじけそうになっている。

 

・きっとそっと想い届く

この言葉が出てくるのは、2人が簡単には想いが届けられない状況にあることの裏付けでもある。

 

 

これを考えたとき、ああそうだこの曲は「花男2」の主題歌だった、と思い出す。

花男2における道明寺とつくしの関係性を当てはめれば、『Love so sweet』はかなりしっくりくる。

花男」1で道明寺とつくしは結ばれた。しかし「花男2」では、道明寺がニューヨークへ留学し遠距離恋愛となる。そのために2人はすれ違い続ける。

だから「ふたりが離れていっても」なのだ。道明寺とつくしは物理的に離れているのだから。

 

 

・信じることがすべて

道明寺とつくしは、お互いに浮気していないか?と不安になりつつも、最終的には信じ合うことで結婚へと至った。

 

・輝いたのは鏡でも太陽でもなくて/あの涙ぐむ雲のずっと上には微笑む月

冒頭から「太陽」と「」というキーワードが出てくる。

東京から見てニューヨークは地球の裏側だ。こちらに太陽が出ているとき、あちらでは月が出ている。

ここでは「」が雨のメタファーとして書かれている。こちらに雨が降っていても(=2人が泣いていても)、雲の上には月が出ていて、太陽の出るあちらの空とつながっている。

だから離れていても2人はつながっている、ということだ。

 

・あの頑なで意地っ張りな僕を変えた君の手

ここはまさに、つくしによって変えられた道明寺のこと。

 

 

そもそも上に挙げたサザン・桑田の曲には、失恋の曲が多い。

 

『Love so sweet』が言いたいのは「遠く離れているけど変わらず愛してるよ」……ということ。

鏡のようにすぐに割れてしまいそうな不安定な2人の関係と、男性側の一途な愛情。それがやはりサザン・桑田っぽいのかもしれない。

 

 

 

 

最近の話だ。嵐が『Turning up』を発表した際、わたしはいたく感動した。

 

https://j-lyric.net/artist/a000eac/l052631.html

 

「世界中に放て Turning up with the J-pop!」

 

この曲から感じられたものは、「俺たちはJ-popの最前線を作ってきたのだ」という貫禄。

そして「世界中へ誇れるJ-popを一手に背負ってやる」という覚悟。その2つだ。

 

そして桑田佳祐も、J-popの最前線を作ってきた第一人者である。

 

『Love so sweet』をリリースした2007年は、嵐にとって人気爆発前夜。彼らの分岐点、過渡期といえる時期だった。その後間もなく、彼らは国民的スターと呼ばれるまでになる。

推察するにこの2007年頃、嵐、ひいては彼らの制作陣は、J-popを背負う覚悟を決めたのではないだろうか。

サザン・桑田オマージュは「J-pop」の象徴として、嵐の楽曲に取り入れられた。そう思わずにいられない。

 

残念ながら、嵐は2020年末に活動を休止した。

しかしどうだろう?

彼らが世界中に放った数々のJ-popは、今もわたしたちの耳に届いているではないか。

先日の「ジャニーズカウントダウン」でも、『Love so sweet』はしっかり後輩たちによって歌われていた。

 

 

わたしが嵐担になった頃から15年近くが経った。多感な小学校~中学校時代を、馬鹿の一つ覚えみたいに嵐の音楽ばかり聴いて過ごしてきた。

今でも、カバンの中にはあの音楽たちが溢れている。世間知らずだった、いたいけな想い出とともに、未だに光っている。

それはいつまでも、どんな曲を聴いても上書きされることのない、唯一無二の音楽体験となっているのだ。

 

彼らの音楽が世界の誰かの中で響く限り、彼らがくべたJ-pop魂は、決して絶えることがないだろう。

 

 

 

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