消えていく星の流線を

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デフォで重め

【ネタバレ】映画『ノイズ』感想・考察 ~ノイズは増幅し、やがてメロディーをかき消す

 

2022年1月28日に公開された映画『ノイズ』を観ました!

 

端的に言って おもしろかったです!

藤原竜也にハズレはないですね……なんと言っても、まさか月(藤原竜也)とL(松山ケンイチ)があんなことになるなんて……グフ……グフフ……あの時代に実写DEATHNOTEを観てた人は全員観てほしい!レッチリ!!

 

この映画はね~マジでネタバレ知らずに観てほしい。

わたしも割とネタバレ平気なタイプだけど、この映画は頭で辻褄を考えるより、映画の中に入り込んで流れに身を任せて観たい映画。

だから体感してほしいです。この島で何が起こるのか。何が壊れ、何が生まれるのか。それは希望なのか、終焉なのか。

 

というわけで、以下ネタバレあり で『ノイズ』の感想を書いていきますが、

映画本編観てない人、この記事読まないで!!絶対読まないで!!お願い!!

そして観てから読みにきて!!お願いします。

 

なお、セリフの引用はうろ覚えです。

 

 

 

 

◆映画『ノイズ』とは(ネタバレなし)

 

 

愛知県沖に浮かぶ美しく平和な島、「猪狩島(ししかりじま)」。高齢化と過疎化にあえぐこの島は、イチジクを特産品として全国に売り出し、復活を目指していた。

その第一人者こそ、島一番のイチジク農園を営む泉圭太(藤原竜也)だ。圭太は島民たちから「救世主」と頼られる存在だった。

そんな圭太の仕事を、幼なじみの純(松山ケンイチ)も支える。

そしてもう1人の幼なじみである守屋真一郎(神木隆之介)は、この島の駐在員として平和を守ることを夢見ていた。今、その夢が叶って、彼は駐在員に就任した。

そんな穏やかな島を、島民は皆深く愛していた。

 

しかしある1人の男が島を訪れたことにより、平和の均衡が乱れていく──

 

受刑者の更生を促すボランティアをしていた元刑事が、ある殺人犯の元受刑者をこの島へ連れてくる。

しかし元刑事は、その道中で男に殺されてしまう。

そのまま島の中をうろつく殺人犯の男。彼は圭太のイチジク農園に入り込み、そこで圭太、純、真一郎の3人に見つかってしまう。

平穏な生活に突如侵入してきた、1人の「ノイズ」。それを排除しようと揉み合うはずみで、圭太は男を殺してしまう。

 

島で──それもイチジク農園で殺人事件が起こったことが知れれば、イチジクによる一大復興計画は台無しになってしまう。

そして真一郎の一言により、3人は決めた。──「なかったことにしましょう」

かくして、3人は男の遺体を埋めようと計画するのだが……?

 

先に感想を言うと、思ったより怖くなかったです。

予告がめちゃくちゃホラー感出してくるから結構覚悟してたんだけど、ホラーよりはミステリーでした。ただ、死体は本当に増える。(笑)

 

あと『ミッドサマー』のときも書いたけど、映画サイトの背景に砂嵐のようなノイズを入れるデザイン、流行ってるの?

 

さて!

次からはいよいよ ネタバレあり で『ノイズ』の感想(感想8割・考察2割)を書いていきます。

観てない人はここで帰れ!!(言い方)

 

 

 

 

 

 

 

◆『ノイズ』感想&やや考察(ネタバレあり)

 

そこは自然と形成された「クローズド・サークル」

結論から言うと、この映画から最もわかるものは「閉じられた世界の怖さ」「盲目的な愛情の怖さ」だ。

この島の人々は、この島で生まれてこの島で死ぬ。自分もそうだし、親も、そのまた親の世代もそうだった。この島の人々にとって、「世界」とは実質この島の中だけのことだ。

コンクリートジャングルも、排気ガスのにおいも知らない。

あの人たちは、島に元々ある以外のもの・人に対して、免疫がまったくない。だから外部から来た殺人犯や刑事に対して、過剰なほど拒否反応を見せる。

つまり、この島の人々は潔癖症なのだ。

 

でも、島で生まれて暮らすということは、多かれ少なかれそういうことなのだろう。絶海の孤島で寄り固まって暮らしていては、そこには自ずとクローズド・サークルが生まれる。それも、かなり強固な絆というバリケード武装された結界だ。

 

「この島は本当に美しい」

「事件なんて無縁の島なんです」

「皆で助け合っている」

「これからこの島を盛り上げていかないとね」──

島民たちは、幼い頃からそう刷り込まれてきた。圭太もその一人だ。

しかし、その盲目的な愛情はときに重大なエラーを引き起こす。

 

わたしはこの映画の予告編を観たとき、「この映画は面白くないかもしれない」と思った。それは、「なぜ誤って殺してしまったことを隠匿するのか?正当防衛なのに」と、そもそも論で冷めてしまったからだ。

でも本編を観ればそれもストンと腑に落ちた。

圭太は、すでに重度の潔癖症だったのだ。

この「美しい島」を守るためには、どんなに小さな汚点も付けてはいけない。ノイズを見つけたら、何がなんでもすぐに排除しなければ──そういう強迫観念に囚われていた。この島ではそう考えることが当然だった。

「埋めよう」と決めるに至った思考回路の源流がしっかりとわかったので、ああそりゃこの島にいたら死体埋めるかもな、と納得できたのだ。

 

どことなくカルト的なこの感じ、『ミッドサマー』を思い出す。やめて、思い出したくないあの映画(笑)

また、『羊の木』にも似ていると感じた。

 

ともかく猪狩島の島民たちの思考は閉鎖的で、それが宗教にも近いのだ。

 

 

巧みなメタファーの数々

イチジクは割るとグロテスク

な断面をしている。

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わたしも見た目がなんとなく苦手で、未だにすすんで食べることはない(笑)

 

劇中で、圭太のイチジク農園がテレビの取材を受けるシーンがある。その際、割ったイチジクを見たアナウンサーも「グロテスクですね~」と言っていた。

 

外側はきれいだけど、内側はぐちゃぐちゃ……

それは、「この島そのもの」を表しているのだ。

外側から見れば、自然豊かで島民たちが仲良く暮らす平和な島。

しかし実情は、島民皆がとんでもない潔癖症を患っている異常な島。

 

イチジクはまさにそんな猪狩島の本質を表している、素晴らしいメタファーだったと思う。

 

 

ノイズの多さ

『ノイズ』というタイトルを体現するかのように、劇中ではさまさまな「ノイズ」が効果的に使われる。

 

刑事や圭太のスマホにかかってくる電話によって、しばしば物語は動かされていた。

そして終盤、町内会の人たちに届く一斉メールが、起承転結の「転」を担っていた。

そのキーポイントに必ず存在したのが、着信音やバイブ音という「ノイズ」だ。

 

さらには、刑事が圭太を追及していた最中、突如響き渡った銃声──

これが、この映画でもっとも意表を突く「ノイズ」だっただろう。誰が何のために銃を撃ったのか、文字でも書きたくないくらい胸糞悪かった。

 

さらに銃声の繋がりで言うと、この映画は、純が猟銃を持ち害獣駆除をしているシーンで幕を閉じる。そこでは2発の銃声が鳴る。

わたしの母は、この最後に純が撃ったのは、加奈(黒木華)と娘じゃないか?と言っていた。だから2発だったのだと。

ちょっと……

すごくないですか!?この予想!?

わたしは単に、全部仕掛けた確信犯のくせに自分は平気な顔していつもどおり暮らしてるんだな~としか思わなかった。

だが、圭太がいなくなっても加奈は圭太を想い続けている。純が何をしても加奈は手に入らない。それならいっそ加奈と娘を殺してしまおう──その展開も大いにありそうだ。すごい。

 

 

美しい?音楽

この島には、美しいクラシック音楽のBGMが流れている。

映画冒頭のベートーヴェンの『田園』。

町内放送でお昼を知らせるモーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』。

なお「アイネク」は町長(余貴美子)がケータイの着信音にも設定していた。彼女の好きな曲なので町内放送にも使われている。

 

どちらも貴族文化が隆盛していた古典音楽の代表的な曲で、流れるような美しいメロディーが特徴的。

そんな流麗なメロディーが、まるで「ほら、この島はきれいでしょう」と言わんばかりに主張するのだ。その過剰なきれいさこそ、この島の異常な点そのものであるにもかかわらず。

このような美しい音楽によって、島の異常さがより際立っていた。

 

ちなみに「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とは「小さな夜の音楽」を意味する。

なのにお昼の放送に使われているのだ。このへんも、島のねじれた現状を表している気がしてならない。

 

 

その他感想

一番興奮したのはなんと言っても、

月とLが2人して追い詰められてる!?

ってところ……月とLが2人して月に……状態。

……と思ったらやっぱり追い詰めてるのは松ケンだったからね!!

エンドロール、藤原竜也松山ケンイチ横並び。天を仰ぎました。

 

あとは、まあ警察をなめた映画だなと思った(笑)

スコップ(だっけ?)に死んだ渡辺大知の指紋を付けて偽装してたけど、死ぬ前の指紋と死んだ後の指紋はわかるらしいよ。

渡辺大知の履歴書の指紋は調べなかったんだろうか……そんなわけ……松ケン、素手で触ってた気がするんだが。

 

渡辺大知の芝居は良すぎました。余貴美子は面白すぎました。

 

 

◆総評

平和な島で、島民たちは1ミリの疑いもなく幸せに暮らしていた──あの日までは。

たった1人の「ノイズ」が侵入してきたことがきっかけで、圭太は、そして島は全てを失ってしまった。

小さなノイズの時点で適切に対応していれば、あんなことにはならなかった。他に誰が死ぬこともなかった。

 

嘘を隠すためにはさらに大きな嘘を塗り重ねなければいけない。

ノイズを隠すためにはさらに大きなノイズを鳴らさなければいけない。

そのようにノイズは増幅し、やがて美しいメロディーをかき消してしまうのだ。

あの惨事を引き起こした諸悪の根源こそ、島民たちの島に対する「盲目的な愛情」だった。

 

わたしたちはスクリーンの外側から、我が物顔でこの物語を見ている。

だが、一度考えてみるべきだろう。

わたしたちのいる世界は、果たして「あの島」のようになっていないか?知らぬ間に狭い世界に閉じ込められてはいないか?

 

もしかしたら、すでに狭い世界の内側にいる、といつか気付くかもしれない。そのときはこの映画を思い出し、反面教師にすればよいのだ。

わたしたちは「いかに狭い世界にいるのか」に気付く慧眼と、そこから飛び出す決断が必要なのだと思う。「島を出たい」と唯一言った加奈のように。

 

 

◆映画『ノイズ』公式サイト

 

 

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エモで生きてる声優オタク

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