消えていく星の流線を

消えていく星の流線を

デフォで重め

ジャニヲタがアイドリッシュセブンの沼に落ちて救われた話でもする?

 

以前、こちらの記事で「2次元アイドルと現実のアイドルの違い」について書いた。

 

 

わたしは結論として

【2次元アイドルは必ず成功する 現実のアイドルは成功するとは限らない】

【2次元アイドルは半永久的な存在である 現実のアイドルはいつか必ず死ぬ】

ことを示した。 

 

 

私は「2次元アイドルと3次元アイドルを比較するには、まず2次元アイドルを知らなければ」という考えに至り、昨年の夏頃から2次元アイドルに手を出した(言い方)。

まずは手っ取り早く曲を覚えたいと思い、男性アイドルのリズムゲームを片っ端からインストールした。

 

正直に言うと、わたしは2次元と3次元を比べて「ほら、現実のアイドルの方が魅力的だろう」と自分の中で確かめたかった。

「訓練された声優さんの完璧な歌より、粗と伸びしろが残った3次元アイドルの歌の方が魅力的だ」と思っていた。全国のプロデューサー・マネージャーなど各位、ごめんなさい。

 

 

こういったリズムゲームは大抵、リズムゲーム機能とストーリー機能を併せ持っている。しかしわたしは曲を覚えることが目的だったため、ほとんどのゲームのストーリーは飛ばし読みしていた。 

 

が、『アイドリッシュセブン』は違った。

楽曲を解放するためにストーリーを飛ばし読みしていたわたしが、アイドリッシュセブンではストーリーを読むために楽曲をプレイした。

そして音速で沼にドボンした。

ちなみにこれはプレイ始めて10日くらいである。

 

わたしの中の2次元アイドル観は、アイドリッシュセブンとの出会いによって135°くらいは変わった。

紀元前/紀元後みたいに、「アイドリッシュセブン/アイドリッシュセブン後」に分けられるくらい。 

 

この記事ではジャニヲタ視点から、『アイドリッシュセブン』のストーリーの何がこんなにもわたしの心を掴んだのか、振り返ってみた。

 

 

  

 

アイドリッシュセブンHey!Say!JUMPみについて

 

アイドリッシュセブン』のストーリーの1番の特徴、それは

【底抜けに明るくない】ことだ。

感覚だが、 明るいパート50/暗雲パート50 くらいの割合で、暗い。

アイドルたちは重い過去を背負い、芸能界の陰謀に飲まれ、挫折し、傷つく。

傷を抱えながら、苦しみながら、トップを目指し続ける。

そんな2次元アイドルを、わたしは見たことがなかった。

 

明るく前向きなアイドルの表面だけでなく、彼らがその背中に何を背負っているのか、何に苦しんでいるのか……そういう裏面を描くことで、よりリアルに感じられる。

だから元々3次元アイドルが好きなわたしは、違和感なくこの物語を受け入れることができた。 

 

 

ぼかしても仕方ないのではっきり言う。

わたしはストーリーを読みながら、アイドリッシュセブンというグループを、Hey!Say!JUMPに重ねていた。

 

わたしは以前、Hey!Say!JUMPの伊野尾慧くんの担当だった。

彼らが今ほど人気が出るまでは、楽しいことと同じくらい波乱もあったグループだと思う。楽しいことも苦しいことも、ファンとHey!Say!JUMPは一緒に感じてきたと、勝手に思っている。

 

そんなHey!Say!JUMPの姿とアイドリッシュセブンが重なってしまう場面が多々あったのだ。

その度にわたしは「ああ、Hey!Say!JUMPもそうだったのだろうか」と、思い返しては涙を流した。

2次元アイドルを見て泣くなんて、『アイドリッシュセブン』に出会う前の自分は思ってもみなかった。

 

以下、その具体的な場面を示していく。 

 

 

空席だらけのライブ

・1部2章4~5話

アイドリッシュセブンは初ライブに臨む。サイトのアクセスは上々で、多くのお客さんが入ると思われていた。

しかし当日、蓋を開けてみれば、お客さんは9人しか入っていなかった。ガラガラの会場でも、全力で歌い踊るアイドリッシュセブン

 

   ◆

 

「ガラガラのライブ」でわたしが思い出したのは、「全国へJUMPツアー2013」東京ドーム公演だった。

このツアーはHey!Say!JUMP史上1番に公演箇所が多く、ファンの数と会場のキャパシティーが見合っていなかった。東京ドーム公演は多くのチケットが余り、急遽Sexy ZoneA.B.C-Zを応援に呼ぶことになった。それでも満席とはいかず、3階席の一部が黒幕と風船で潰された。

その光景を見て、わたしは痛ましさに泣き出しそうになった。 

ライブ最後のあいさつで、中島裕翔くんが言った。
「僕たちから離れないでください」
とても悲痛な叫びに聞こえた。ふつう、ライブのあいさつで聞かれるような言葉ではない。だけど、ファンでさえこの言葉を真剣に受け止めてしまうほど、この頃のHey!Say!JUMPは逼迫していた。

その時の裕翔くんの顔を、わたしは今でも忘れられずにいる。

 

 

 満員になったライブ

・1部6章3~5話

アイドリッシュセブンはガラガラのファーストライブと同じ会場でライブをするが、今回は満員になった。

 

   ◆

 

全国へJUMPツアーの翌年、同じ東京ドームで、Hey!Say!JUMPはコンサートを行った。それがLive with me in 東京ドーム」だ。

このコンサートでは応援グループを呼ぶこともなく、Hey!Say!JUMPのファンだけで席が埋まった。

本当によかった。コール&レスポンスの一体感に鳥肌が立った。

 

 

メンバー2人が別ユニットで活動

・1部7章~9章

四葉環と逢坂壮五の2人の人気が極端に上がり、八乙女事務所という他事務所から引き抜かれそうになる。その対策として、2人は別ユニット「MEZZO”」として、アイドリッシュセブンよりも先にデビューすることになる。

 

   ◆

 

この時わたしは『NYC』というユニットを思い出していた。

Hey!Say!JUMPの山田涼介くん・知念侑李くんに加え、中山優馬くんの3人で、Hey!Say!JUMPとは別にデビューしたユニットだ。

 

Hey!Say!JUMPファンの反応はさまざまだった。彼らの活動を楽しみにする者もいれば、疎む者もいた。NYCの活動によって、Hey!Say!JUMPの活動が制約されることを恐れたからだ。 

確かに、山田くんと知念くんはメンバーの中でも特に人気・知名度が高かった。世間一般的にHey!Say!JUMPは「山田・知念とそれ以外」と認識されることも少なくなかった。

 

一部のメンバーの人気が上がる——メンバー2人が別ユニットとして活動する——そんな状況を、Hey!Say!JUMPと重ねずにいられなかった。

 

 

大人の事情が絡むテレビというメディア

・1部15章3話

八乙女事務所のアイドルグループ、TRIGGERは、社長がテレビ局と揉めたために、音楽番組「サウンドシップ」への出演が取り消しになってしまう。

 

   ◆

 

大人の事情によってアイドルのテレビ出演が制限される。わたしはこの状況を知っていた。

数年前まで、ジャニーズ内部には「派閥」が存在していた(と言われている)。

ジャニーズ所属グループは「藤島ジュリー派」と「飯島派」に大別され、互いの派閥のグループは共演することがほとんどなかった(と言われている)。

アイドルのテレビ出演には、さまざまな大人の事情が絡んでいる。このシーンは、あの頃のゴタゴタしていた(と言われる)ジャニーズの裏側を思い出させ、わたしはなんともやるせない気持ちになった。 

 

 

センター交代

・2部3~4章

アイドリッシュセブンのセンター七瀬陸は、体調悪化により和泉一織とセンターを交代することになった。陸はネットでエゴサーチし、一織センターの評判が良いことに傷つく。一織はのちに、「センターに立つことが怖くてたまらなかった」と吐露している。

2部7章4話、陸と一織のファン同士も言い合いになっていた。

 

   ◆

 

Hey!Say!JUMPにもあった。「センター交代」という出来事が。

彼らのデビュー時、センターは中島裕翔くんだった。

しかしセカンドシングルから突然、センターは山田くんに替わった。このことは結果として、2人を長く苦しめていた。インタビューなどで「当時は仲が良くなかった」と、本人たちは回想している。

また、彼らのファン同士が揉めることもしばしばあった。

山田くんはセンターに立つことに、裕翔くんはセンターに立てなかったことに、外野からは見えないプレッシャーを感じていたのだろう。

 

陸と一織はまさにそうだった。お互いを比べ、劣等感に溺れる。

「ああ、これ、やまゆとだ……」そう言ってわたしはまた泣いた。

 

 

 

アイドルファンが共感できるセリフたち

 

さらにピンポイントに、キャラクターのセリフに注目してみた。

アイドリッシュセブンの劇中には、アイドルファンなら思わず「わかる!」と口に出してしまいそうなリアルなセリフが多数飛び出す。

 

 

プロである以上、どのライブも同じクオリティのものを提供する。レストランで同じ値段を払ってオムライスを食べて、昨日は美味しくて今日はまずかったら嫌でしょう?」(1部4章3話) 

体調不良でライブに出られないはずだった九条天は、しかし病院を抜け出しステージに立った。その時に言ったのがこのセリフ。

 

   ◆

 

これは、堂本光一くんも似たようなことを言っていた記憶がある。「『SHOCK』はどの公演も同じクオリティのものを届ける。どのファンに対しても平等に対応する」というような。

九条天くんのプロ意識はとても光一くんに近いものがある。

 

 

心の底から“頑張ってください”と応援したくなる気持ちと、“もう頑張らなくていいですよ”と泣いてお願いしたくなる気持ちが行ったり来たりする」(2部3章2話) 

体調が優れず、ステージに立つこともままならなくなった陸。それでもセンターであり続けたいと言った陸に、マネージャーである紡がこぼしたモノローグ。

 

   ◆

 

今まさにわたしが、欅坂46の平手さんに抱いているのがこの感情。

昔、山田くんがソロシングル『ミステリーヴァージン』を出した時も、同じような気持ちだった。山田くんはのちに「ソロデビューは、するかしないかずっと迷っていた」と言っていた。

センターに立って頑張る君も素敵だけど、無理をしてまでそこに立たなくていい。センターに立たない君もきっとみんな受け入れてくれる。だから、頑張ってほしいけど、同じくらい頑張らなくていいとも思う。

 

 

アイドルを苦しめるのはいつだって、好きの感情なんだよ。ファンが増えれば増えるほど好きの種類が無限に増えていく。でも全部の期待には応えられない。それが彼らを苦しめる。アイドルは人を幸せにして、愛されるのが好きな奴らだから。期待があるから不満が生まれて、好きがあるから嫌いが生まれる」(2部4章4話)

アイドリッシュセブンの先輩グループ、Re:valeの百が、人気が出たてのアイドリッシュセブンを気にして紡に言ったセリフ。

 

   ◆

 

これはわたし、ああ、本当にそうだなあって思ったんですよ。

伊野尾くんの担当を辞めようとしていた時、茶髪マッシュの髪型や猫好きキャラが嫌で仕方なかった。それ以前の、黒髪で犬を飼っていた伊野尾くんがかき消されてしまうようで。それからわたしはネットなどに、伊野尾くんの批判も書き込むようになった。

だけどわたしは伊野尾くんを嫌いになったわけじゃない。今だってもう担当ではないけど、嫌いではない。好きだったからこそ、「変わらないでいてほしい」「こうだったらもっといいのに」という欲が出てきてしまう。それが結果として、批判のような言葉を生んでしまった。

この百くんのセリフを見て、わたしはハッとした。

 

 

「ファンと交わした約束は絶対に破らない。アイドルなら当然のことだ。(約束とは)コンサートチケットだ。その日必ずそこに行って、笑顔で全力を尽くす約束」(2部5章1話)

九条天くんのセリフ。

 

   ◆

 

これまた、はあ~!ってなった。

「コンサートチケットはその日必ずそこに行って、笑顔で全力を尽くす約束。」

 

リピートアフターミーですよ。

「コンサートチケットはその日必ずそこに行って、笑顔で全力を尽くす約束。」

 

だからわたしたちファンも、そのチケットを買った以上は、彼らに会いに行けるよう努力しよう。そう思った。

 

 

俺たちはスターなんかじゃないけど、見上げてくれる人たちがいるから、体中に精一杯、銀紙貼っ付けて星のフリしてんだ。せめてその人たちの前では笑ってたいから、飛べもしないのに必死で宙に浮かんでるフリしてるんだ」(3部7章4話)

Re:valeの百のセリフ。

 

   ◆

 

このセリフは衝撃だった。

A.B.C-ZHey!Say!JUMPも、全てのアイドルたちだって、少し道が違えば普通の人だったかもしれない。彼らは至って普通の少年で、人並みに怒ったり傷ついたりミスしたりすることも、わたしは知っている。

ひとつだけ違うのは、綺麗な衣装を着て、ステージの上で光ろうと努力していること。

その銀紙を剥いでしまえば、彼らはアイドルじゃない。普通の人間なのだ。その弱い部分も、全然完璧じゃない部分も好きだなあって、改めて思った。

 

 

「(理想のアイドルは)終わらないアイドルよ。夢が終わるところなんて見たくないもの。日本一のトップスターじゃなくたって、顔に傷があったって、声が出なくたって、終わらせないでくれたらそれでいいのよ。だけどその夢を叶えるのが一番難しい」(3部14章2話)

TRIGGERのマネージャー、姉鷺カオルのセリフ。

 

   ◆

 

これぞ、わたしが冒頭の記事で出した結論だ——【3次元アイドルにはいつか必ず終わりが来る】。

Hey!Say!JUMPからメンバーが脱退するなんて。NEWSが4人になるなんて。SMAPが解散するなんて。誰も考えていなかった。だけど彼らのうち、ある者は形を変え、ある者は形そのものを消した。

生身の人間である以上、永遠なんて存在しない。

アイドリッシュセブン劇中では「理想のアイドルは終わらないアイドル」とされているが、それは実現できるのだろうか?彼らの顛末を見守りたい。 

 

 

 

以上、ジャニーズ畑育ちの人間が『アイドリッシュセブン』のジャニーズみについて、考えてみた。

 

アイドリッシュセブンについてのインタビューなどを読んでいるうち、統括プロデューサーの下岡聡吉氏がこんなことを言っている記事を見つけた。

アイドリッシュセブンのライバルは3次元かもしれない。アイドリッシュセブンのコンテンツが2次元を超えることが願望」*1

 

そうらしいです。アイドリッシュセブンは、確実に3次元アイドルを意識して作られていた。

もともとジャニヲタはターゲットど真ん中だったのかもしれない。

 

 

 

アイドリッシュセブンHey!Say!JUMPと重なる」という話をした。

どう表したらいいのか悩ましいが……

Hey!Say!JUMPの担当だった時、苦虫を噛み潰すような思いもした。

しかしアイドリッシュセブンが物語内で困難を乗り越えてくれたおかげで、わたしは「Hey!Say!JUMPもきっともう大丈夫だ」と思うことができた。

 

救われたように感じたんだ。

 

2次元アイドルが、2次元の壁を超えて、3次元アイドルに働きかけた瞬間だった。

まんまと製作の思うツボ。

 

 

 

ちなみに以前、ゲーム中に登場するアイドルグループがそれぞれ、どのジャニーズグループっぽいか当てはめてみていた。異論はめちゃくちゃ認める。

アイドリッシュセブンはHey!Say!JUMPだし、めっぞはやまゆとだし、りばーれはKinKi Kidsだし、ずーるはKAT-TUN

TRIGGERは難しかったが、考えに考え「少年隊だわ」という結論に至った。

 

このような強めのジャニヲタフィルターがかかった記事を読んでいただきありがとうございました。

少しでも共感いただけた方……興味を持っていただけたジャニヲタの方がもし……もしいらっしゃったら、騙されたと思ってアプリをインストールしてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

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