その感情に名前はないけど ~『ユーリ!!! on ICE』の愛について
こんにちは!!
今回はテレビアニメ『ユーリ!!! on ICE』についてです。
あのさ~、わたしYOI大好きなんだ……。
一挙劇場上映も行った。4DXも行った。ヴィクトルはバニラの香りがしました。
全話何ループしたかな、もうわかんないっす。でも驚くことに何回見ても感動が褪せないんですよ。毎回11話12話泣く。比喩じゃなくて涙が出てくる。これ書くためにまた全話ループしたら涙が滝となって降り注いだ。
YOIを見たことがある人はご存じかもしれませんが、このアニメで軸となるものは「愛」です。
これは単に恋愛における愛だけでなく、もっと広義のものを指しています。
今回は『ユーリ!!! on ICE』における「愛」とは何なのか?ということを中心に考察してみます。
※※『ユーリ!!! on ICE』は10月5日(土)からテレビ朝日で再放送が始まります!!
この機会にぜひご覧ください!!(ダイマ)
- 『ユーリ!!! on ICE』における「愛」とは?
- 「愛」を知らないヴィクトル
- ヴィクトルが得た「愛」とは?
- ヴィクトルが勇利を気になり出したタイミングは?
- 勇利の引退を取り巻くヴィクトル・ユリオ
- 成功に向かっていく4回転フリップ
- 勝つために必要なもの、それは「驚き」
- 勝生勇利FS楽曲『Yuri on ICE』について
- ユリオ→勇利の呼び方変遷
- 各選手のプログラムについて
- 小ネタ
『ユーリ!!! on ICE』における「愛」とは?
さっそく本題です。結論からいきましょう。
『ユーリ!!! on ICE』は明らかに腐向けに作られたアニメだと思われますが、劇中の本人たちにはほとんど恋愛感情がありません。
あるのは人間としての「愛」のみで、しかもそれはスケーターとしての尊敬に近い。
勇利「全部、スケートで返すから」
ヴィクトル「OK、手加減はしないよ。それが俺の愛だからね」(4話)
勇利「ヴィクトルの愛を知っているのは世界中で僕しかいない」(6話)
勇利「僕の愛。それはわかりやすい愛や恋ではなくて、ヴィクトルとの絆や、家族や地元に対する微妙な気持ち……。ようやく、自分の周りにある愛のようなものに気づくことができました。初めて自分から繋ぎ止めたいと思った人、それがヴィクトルです。その感情に名前はないけど、敢えて『愛』と呼ぶことにしました」(5話)
このセリフ大好き。今回の記事タイトルに引用させていただきました。
伝説の指輪交換のシーンでさえ、ふたりはスケートの話をしています。
ヴィクトル「明日は、勇利が一番好きだって言い切れるスケートを見せてね」(10話)
「愛」を知らないヴィクトル
ユリオ「じゃあヴィクトルにとってのアガペー(無償の愛)ってなんだよ!?」
ヴィクトル「そんなのフィーリングなんだから言語化できるわけないだろう?」(3話)
愛というものが何なのか、言葉で説明できないと言うヴィクトル。
つまり勇利・ユリオに「愛」というテーマを課しておきながら、ヴィクトル自身も「愛」にピンときていないようです。
クリス「氷を降りて守るものができるなんて、ヴィクトルらしくないよ」(7話)
このセリフが意味するものは、ヴィクトルは(本気の)恋愛など眼中にないくらいスケートばかりしていた、ということ。
ヴィクトル「LifeとLove。20年以上俺がほったらかしにしているもの」(10話)
ヴィクトルはGPF時27歳。5~6歳頃からスケートを始めただろうと考えると、「20年以上」前という年と一致します。
つまり、 ヴィクトルはスケートをしていたために愛を知ることがなかったんだ、と考えることができる。
ヴィクトルはこれまで本気で誰かを求めたことがなかった、本当の愛を知らなかった可能性が高いです。
交際はしたことがあっても、自分が愛されるばかりで、愛することがなかったのです。
ヴィクトル「例えば、思い出してみるんだ。恋人に愛されたこと」(4話)
「恋人を愛したこと」とは言わない。
対する勇利は、優子を本気で好きだった経験があります。
愛することを知らなかったヴィクトルと、愛することを知っていた勇利。
ヴィクトルは勇利に出会ったことで、「愛すること」を知っていきます。
ヴィクトル「勇利の持っているLifeとLoveは、俺が今まで触れたことのない新鮮な世界を教えてくれたんだ」(10話)
ヴィクトル「勇利、コーチとして俺、これから何ができるか考えてたんだ」(9話)
ヴィクトル「勇利にこれから与えるべきものは何だろう?」(11話)
愛されるばかりだったヴィクトルが、愛を与えることを考えている。
愛することについて受動的だった姿勢が、能動的なものに変わっています。
ヴィクトルの左目が隠れている意味とは?
ヴィクトル・ニキフォロフは長く伸ばした前髪を左側に流し、左目を隠しています。
古代エジプトでは、
左目:ウアジェト(ウジャト)の目=月の象徴
右目:ラーの目=太陽の象徴
とされました。
月は満ち欠けを繰り返すことから、月の象徴である左目は「失ったものの回復・修復」の意味をもつとされています。
この左目が隠れているヴィクトルは回復・修復ができない状態、「欠けている状態」で、愛が欠けていることをキャラデザ的にも表していたのかな、と思います。
ここは完全に深読みしすぎなので、そういう説もあるのか~程度に思っていてください(笑)
ヴィクトルが得た「愛」とは?
GPFでは、SPでユリオ・FSで勇利に、ヴィクトル自身のもつ歴代最高得点を抜かれます。
ヴィクトル「振付師兼コーチとしては最高に嬉しいが、競技者としては最高に面白くないね」(12話)
勇利と氷上で戦いたいと思い始めたヴィクトル。
この前にも、「そこまで魅力的な勇利選手なら自分も選手として戦ってみたいと思いませんか?」と記者に聞かれ、はぐらかすシーンがありました(8話)。この頃は、現役復帰を考えてはいたもののまだ迷っている……という状態だったのだと思います。
ヴィクトル「(勇利には)世界選手権5連覇(ヴィクトルの持つ記録と同じ)くらいしてもらわなきゃ割に合わない」(12話)
ヴィクトルは、自分と同じか、それ以上のレベルの選手と戦えることを喜んでいる様子。
つまり、スケート界の進化そのものを喜んでいる ともいえます。
勇利「僕らは愛と呼ぶ、氷の上の全てを」(12話)
アニメ『ユーリ!!! on ICE』はこの勇利のセリフで締めくくられます。
この作品はヴィクトルと勇利ふたりの愛を軸としていましたが、最後の最後で、「スケートそのもの」に対する愛にまで昇華しているのです。
さらに、4話で初めて勇利FS楽曲『Yuri on ICE』が登場したとき、勇利は曲のテーマを「僕の愛について」としていました。やはりヴィクトルと同じく、勇利の愛もすべてスケートに帰結しています。
ヴィクトルが勇利を気になり出したタイミングは?
「僕が勇利に惹かれたのは音楽さ。その体が奏でるようなスケーティングそのものだ」(4話)
勇利はステップを得意としています。
独特のリズム感があり唯一無二のステップが最大の武器!
(公式サイト、勝生勇利キャラクター紹介より)
ユリオも1年前のGPFで勇利を見た時に「心を掴みにくるステップ」(12話)と言っていました。
この時の勇利の演技はボロボロでしたが、ステップだけは実力を発揮していたようですね。
当然この時の演技をヴィクトルも見ているはずですから、勇利のステップのうまさは1年前から知っていたのではないかと思います。
また、このGPF時のバンケットで、勇利が酔ってヴィクトルに「ビーマイコーチ」します(10話)。この時、ヴィクトルはハッとした顔とキラキラのおめめになる。
このバンケットの時すでに、勇利のコーチをすることを決めていた感じがします。
勇利の引退を取り巻くヴィクトル・ユリオ
ヴィクトル「勇利がずっと引退しなきゃいいのにな」(9話)
とにかく勇利を引退させたくないヴィクトル。
でもそれは、ヴィクトル自身だけではどうにもできないものでした。
だからヴィクトルはユリオに助けを求めます。
ヴィクトルによると、「困った時はハグすれば必ず助けてくれるよ」(9話)。つまりハグはSOSの印です。
ヴィクトルがユリオにかましたハグ(12話)は「助けて、勇利の引退を止めさせて」の意。
このハグでユリオは、勇利が金メダルを獲って引退する気だと気づいてしまいます。
それを防ぐには、ユリオ自身が金メダルを獲るしかなかった。ユリオはGPFのFSでは、「勝ちたい」ということより「勇利を引退させたくない」ということだけを考えて滑っている節があります。
ユリオ「金メダル獲れたら辞めんのか? ヴィクトルの点超えられたら他はどうでもいいのか? ふざけんな! 俺をがっかりさせんな!」(12話)
ユリオ「今引退したら一生後悔させてやるよ、バーカ」(12話)
そしてユリオのFSに心を揺さぶられる勇利。GPFはユリオが優勝し、勇利は銀メダルを獲得しますが、ヴィクトルには「金メダルにキスしたいなあ」と一蹴されてしまいます。
結局、勇利の現役続行を繋ぎ止めたのはヴィクトルではなくユリオでした。
勇利を繋ぎ止めたいと強く思ったユリオ……。
誰かを繋ぎ止めたいと感じること。その感情に名前はないけど、勇利は敢えて「愛」と呼びました。
ユリオFS演技後の涙の意味は、勇利を通して「愛」を知ったということです。
成功に向かっていく4回転フリップ
作中で何度も語られるとおり、「4回転フリップはヴィクトルの代名詞」。
4回転フリップ=ヴィクトルと考えてもいいくらい重要なモチーフです。
その4回転フリップ、勇利ははじめ跳べません。が、最終話へ向かうにつれてだんだん成功に近づいていきます。
勇利「ヴィクトルが跳べるジャンプ全部教えて」(4話):4回転フリップ練習開始?
中国大会・FS:試合で初めて跳ぶ。転倒するが回転は足りていた(7話)
GPF・SP:着氷するも手を付いてしまう(11話)
GPF・FS:完璧に成功(12話)
これは4回転フリップというモチーフを通じて、勇利のヴィクトルへの愛がだんだん強くなっていったこと、そして最終的に完全な愛になったことを示しています。
勝つために必要なもの、それは「驚き」
『ユーリ!!! on ICE』の世界では、驚かせること・想像を超えること=勝つ条件 としています。
ユリオ「ヴィクトルは観客を驚かせることを一番大事にしてる。自分にイマジネーションが沸かないなんて死んでるのと一緒さ。俺ならもっとびっくりさせることができる」(2話)
勇利「(ヴィクトルの)真似じゃだめなんだよ。それじゃヴィクトルを超えられない」(3話)
勇利「もっと強くなれる、僕はヴィクトルの想像を超えられる」
ヴィクトル「勇利以上に驚かせる方法はこれしか思い付かないよ」(7話)
伝説の7話。例のキスのあとにヴィクトルが勇利に言った言葉。
「自分にイマジネーションが沸かないなんて死んでるのと一緒」。
想像力が枯渇してしまったヴィクトルは、死んでいるのと同じ状態でした。
しかし12話(最終話)、ヴィクトルはユリオや勇利に触発されたことで、イマジネーションが蘇り、競技復帰を決める。つまり生き返ったのです。
さて、勝生勇利の名前には「生」という字が入っています。
勇利はヴィクトルを生き返らせる人として、名前に伏線が仕組まれていました。
リリア「過去の自分は死にました。何度でも生まれ変われる人間が強いのです」(4話)
ユリオ「ヴィクトル・ニキフォロフは死んだ」(10話)
このユリオのセリフは、リリアの考え方に影響されています。なんといってもユリオはリリアのもとで過酷な修業を積んだので。
「過去のヴィクトルは死に」そして「何度でも生まれ変われる人間が強い」。つまり、生まれ変わったヴィクトルはさらに強くなったのだと推測できます。
勝生勇利FS楽曲『Yuri on ICE』について
※2020.7 追記
遅くなってすみません!(泣)
勝生勇利がFSで使用した楽曲『Yuri on ICE』は、アニメ4話で初登場。
この曲は勇利自身の希望により、「勇利のスケート人生を描いた曲」としています。ピチットくんの友達である音大生の女の子が作ってくれました。
2017−2018シーズンには、須崎海羽選手・木原龍一選手ペアが実際に使用したことでも話題になりました。
ユーリ!!! on ICEにおける「変イ長調」
まず、この曲については調性を知っておく必要があります。
『Yuri on ICE』は「変イ長調」(E♭メジャー)。「ミ♭」が主音のキーです。
個人的に、変イ長調は澄んだ感じというか、凛とした美しさ、水や氷のようなイメージ、色でいうと「青」を感じます。
『ユーリ!!! on ICE』というアニメには、この「変イ長調」が通底しているとわたしは考えています。
たとえばアニメ1話のファーストショット、勇利が長谷津のリンクでヴィクトルのスケートを見ているイメージのシーン。
ここのBGMには変イ長調の『Heartbeats』という曲が使われています。
他にも、以下のシーンで変イ長調のBGMが使われています。
・温泉 on ICEで勇利の演技終了時(3話)
・2人が浜辺で話すシーン(4話)
・勇利がヴィクトルに「ファイナルで終わりにしよう」と告げるシーン(11話)
・勇利現役続行とヴィクトル競技復帰を決めたシーン(12話)
このように、重要なシーンでは高確率で変イ長調の曲が流れます。
そして「勇利のスケート人生を描いた曲」である『Yuri on ICE』も変イ長調。
ここから、
勝生勇利の人生 = 変イ長調
勝生勇利 = 変イ長調の主音である E♭(ミ♭)
に当てはめられると考えます。
「ヴィクトルの音」について
『Yuri on ICE』は勇利のスケート人生を表現した曲で、勇利の人生をなぞるように進んでいきます。
5話の中四国九州選手権大会におけるFSシーンが一番わかりやすい。
ここではヴィクトルのモノローグで、
「ここ、俺がコーチとして勇利の前に現れた情景だよね?」
「愛のようなものに気づくことができた勇利」
……というように解説されています。
以下の譜面は『Yuri on ICE』の冒頭部分。
ピンクで色を付けた「シ♭」の音で勇利のFSでは最初のジャンプを跳びます(『Yuri on ICE』0:23〜)。
ここは恐らく、勇利がスケートを始めて間もなく、ヴィクトルの世界ジュニアの演技を初めて見たところ。
つまり、ヴィクトルは「シ♭」の音で表されていることがわかります。
勝生勇利というキャラクターは「ミ♭」で表されています。
「ミ♭」と「シ♭」は完全五度という音程で、めちゃくちゃ相性がいい。わかりやすくいうと、この2つの音を同時に鳴らすと共鳴します。
以下の部分では、「シ♭」の高音が断続的に鳴り続けます(0:42〜)。
これは、勇利がヴィクトルを意識して滑っていた時期を表す部分。
さらに曲の最後は「シ♭」と「ミ♭」2音だけの和音で締めくくられます。
2人で寄り添ってずっとスケートをしていく、みたいなイメージでしょうか。美しすぎる。
楽器の構成について
『Yuri on ICE』では、勇利と関わるキャラクターたちがそれぞれ楽器で表現されています。
◆勇利はもちろんこの曲の主役である「ピアノ」。
ピアノはこの曲で唯一、ずっと音が鳴っている楽器です。
◆ヴィクトルは、5話の「ここ、俺がコーチとして勇利の前に現れた情景だよね?」というタイミングで弦楽器が鳴り始めることから「弦楽器」(『Yuri on ICE』0:54〜)。
9話、ロシア大会フリー(ヴィクトルが日本に緊急帰国する)の勇利の回想シーンでは、ヴァイオリンの音だけが鳴っています。
これは勇利がヴィクトルのことを強く考えている表れ。
最終話、勇利現役続行とヴィクトル競技復帰を決めたシーンでは、ピアノとヴァイオリンの音のみ──つまり「勇利」と「ヴィクトル」のみが鳴っています。
◆勝生家や西郡家など(記者会見でのセリフによると「家族や地元」)は「ドラム」(0:54〜)。
この楽器編成に注目すると、『Yuri on ICE』は以下のような4ブロックに分けられます。
・ピアノ(0:00~)
・ピアノ・弦楽器・ドラム(0:54~)
・ピアノ〈コレオ・シークエンス〉(1:42~)
・ピアノ・弦楽器・ドラム(2:36~)
これを勇利の人生に当てはめるとこんな感じ。参考は5話FSシーン。
(1)ピアノ:ヴィクトルに出会う前、一人で滑っていた勇利
(2)ピアノ・弦楽器・ドラム:ヴィクトルがコーチになる
(3)ピアノ:「愛のようなもの」に気づくことができた勇利
(4)ピアノ・弦楽器・ドラム:いろんな人に愛を与え、また与えられながらGPF優勝を目指す
(3)の部分では再びピアノのみになりますが、ここは勇利の心の中というか、内省を表している。
同時に、9話ロシア大会フリーでヴィクトルと離れ、1人で滑るシーンを表していると考えています。
(4)の部分では、弦楽器(=ヴィクトル)がドラムよりも数秒早く入っています。
勇利に真っ先に手を差し伸べたのはヴィクトルだった、ということでしょうか。
拍子について
『Yuri on ICE』は6/8拍子。
6/8拍子は、「1小節の中に3拍子×2」という構成です。音で表すと「タ・タ・タ、タ・タ・タ」で1小節という感じ。
3拍子は「ダンスのリズム」として知られています。3拍子といえばワルツと言っても過言ではなく、踊りに直接的に繋がる拍。
「体が音楽を奏でるような」勇利のスケーティングぴったりだといえます。
『History Maker』との関連
アニメOP曲である『History Maker』も実は6/8拍子。
さらに、『Yuri on ICE』は楽器の増え方で4ブロックに分けられましたが、『History Maker』とはこの構成も酷似しています。
Aメロ:オルガン
Bメロ:オルガン・弦楽器・ドラム
サビ前半:オルガン
サビ後半:オルガン・弦楽器・ドラム
『Yuri on ICE』と『History Maker』は、恐らく意図的に構成を似せているのではないでしょうか。
『Yuri on ICE』と死について
『ユーリ!!! on ICE』の音楽プロデュースを担当した冨永恵介さんは、この曲のイメージを以下のように語っています。
“走馬灯のようにめぐる人生と、その様々な「愛」の記憶”のイメージで制作に取り組み始めました。
走馬灯とは一般に、死ぬ間際に見るとされているもの。
つまり『Yuri on ICE』は、「勇利のスケーターとしての死=引退」を最初からイメージして作られた曲だった。
この曲のとてつもない儚さや、そこはかとない切なさは、ここからきていたものだったんですね。
ユリオ→勇利の呼び方変遷
「ヴィクトルがユウリ・カツキのコーチとして日本へ出発? なんで、あのデブに……」(2話)
「カツ丼! もっかい俺がやるの見てろよ」(3話)
「はあ? あの子豚がフリーを自分でプロデュース?」「どこだ、日本の子豚どこに出る?」(4話)
「モスクワでボルシチにしてやるよ、この豚野郎が」(7話)
「どけ、豚」(8話)
「ジャンプの構成変えるぞ。じゃなきゃJJや勇利に勝てねえだろ」(9話)
「どうだカツ丼! 俺のフリーは!」(9話)
「家畜からもらった指輪はただのガラクタだ」(10話)
「豚に食わせる金メダルはねえ!」(12話)
「ヤコフ、リリア、爺ちゃん、優子たち、そして勝生勇利。よく見てろ」(12話)
基本的に勇利のことを「豚」「カツ丼」と呼ぶユリオ。
ヴィクトルが有利に指輪をプレゼントした後は、嫉妬のあまり「家畜」呼ばわりです。ハアかわいい。
しかし9話で初めて「勇利」と呼び、最終話では「勝生勇利」とちゃんと名前を呼んでいます(ただし本人に向けて呼んだことはない)。
10話以降は、ユリオも勇利に愛をもらったことが強調されています。
ヴィクトル「勇利、自分じゃ気づいてないかもしれないけど、俺以外にも勇利のL(Love・Life)を貰った人はたくさんいるよ」(10話)
リリア「彼はたくさんの出会いの中、愛の入口を感じたのではないかと思います」(11話)
最終話に近づくにつれ、勇利がユリオにとってかけがえのない存在になっていったことがわかります。
また、1年前のGPFから勇利のステップのうまさは認めていました。
ユリオ「ユウリ・カツキ……。散々ジャンプミスってんのに心を掴みにくるステップ……。ノーミスで見たい。どんな奴なんだろう」(12話)
実は1年前の時点から勇利のことが気になって仕方なかったユリオ。
「ユーリは二人もいらない。さっさと引退しろブァーーーーーカ!!!」と突っかかってきたのは、気になっていることの裏返しだったんですかね。ハアかわいい。
各選手のプログラムについて
『ユーリ!!! on ICE』では、他の選手のプログラムもヴィクトルと勇利の関係性を暗示している、といわれています。
ミケーレSP
ミケーレのプログラムは、特にロシア大会中のヴィクトル・勇利の関係性をオーバーラップしています。
ミケーレ「肉体の愛に頼らないワシの愛だけがサーラを守れる」(8話)
「肉体の愛に頼らない愛」はそのままヴィクトル・勇利の関係性にも当てはまります。この二人の愛はあくまで恋人としてのものではなく、師弟愛なので。
しかしサーラは「私がいなくてもミケーレが勝てるようにならないと、二人ともダメになる」と語っています。
ヴィクトル・勇利の、依存にも近い関係をなぞっているこのシーン。配役としては、
(選手)ミケーレ=勇利
(見守る立場)サーラ=ヴィクトル
となります。
そして実際にロシア大会の最中にマッカチンが饅頭を喉に詰まらせ、勇利はヴィクトル不在の状態でFSを戦うことになるのです。
「ヴィクトルがいなくても勇利が勝てるようにならないと、二人ともダメになる」。
しかし勇利はそれを克服できず、ロシア大会FSはボロボロでした。
ミケーレFS
「離れていてもわしはちゃんと分かるぞ」(9話)
ヴィクトルが日本に帰国中。
ヴィクトル不在のロシア大会FS、勇利の演技はボロボロでした。
ロシア大会を通してミケーレ・サーラ兄妹は依存関係を克服したのに対し、ヴィクトル・勇利は依存を克服できず、ここからさらにドロ沼に……。
そしてGPFが始まる際には、勇利の引退する・しない問題でヴィクトルが泣いちゃったりします。
ギオルギーFS
ギオルギーのこのシーズンのテーマは「ハートブレイク」。
愛していた彼女にふられたギオルギー。
反対に、ずっと1位だった、かつ誰かを愛したことがないヴィクトルはハートブレイクを知りません。
しかし、ヤコフいわく「自分が一番と思ってる男にコーチなんぞ務まるわけがない」(2話)
実際ヴィクトルは、中国大会では試合前なのに勇利に生モノを食べさせようとしています(6話)。
ロシア大会では勇利ほったらかしでファンサ(8話)。
GPF前日も、試合を控えた勇利にホットワインを勧めています(10話)
この時点ではまだまだコーチとして未熟で、選手への配慮が行き渡っていません。
そうです、ハートブレイクを知らないヴィクトルはコーチとして相応しくないということです。
対してギオルギーは「ハートブレイク」をテーマとした強烈なSP・FSで、フィギュア界を驚かせました。
ヴィクトルがあれほど求めていた「驚き」をギオルギーは持っていた。
つまり、ヴィクトルに本当に必要だったのはハートブレイクだったのではないでしょうか。
テレビアニメでは最終話、GPFエキシビションで『離れずにそばにいて』をペアで滑るなど、ヴィクトル・勇利はがっつり依存し合ってる状態だといえます。
今後続編があるとしたら(絶対あるはず)、ヴィクトルが一度コーチを降りてハートブレイクする可能性があると個人的には思っています。
JJのSP
プロポーズの回想(11話)
JJはGPFの前、彼女に指輪を渡し「ワールド制したら結婚しよう」とプロポーズしました。
同じ頃ヴィクトルは勇利と指輪を交換し、
「これはエンゲージリングだから、金メダルで結婚だよ」(10話)
と言っていました。
これもオーバーラップしています。早い話が、「どっちが金メダル獲って結婚できるかな対決」です。
まあ結局ユリオが優勝しちゃったんですけどね……(笑)
みんなお幸せに(笑)
オタベックFS
オタベック「お前が何を望んでいたか忘れるな、今こそ出発する時だ。お前の夢を満たせ。お前だけがそれを実現できるのだ」(12話)
10話、GPF開幕前に、ユリオとオタベックは友達になります。
このオタベックのモノローグが意味するところはユリオの心情なのでは?と思います(このモノローグは、ヴィクトルがユリオにハグをかますシーンに被せられている)。
「ユリオが望んでいること」は競技者としてのヴィクトルに勝つこと。
それにはまず、ヴィクトルを競技に復帰させる必要があります。
小ネタ
・1話の回想、勇利と優子が喋っているところで西郡が貧乏ゆすりしている。
この時からすでに西郡は優子が好きだったので、仲良さげな勇利に嫉妬していたようです。
・1話、4月なのに雪が降っていたのはロシア人であるヴィクトルが長谷津に来る布石。
・4話、勇利がランニング中に聴いているのはチャオチャオからボツをくらった『Yuri on ICE』の原曲。これも『Yuri on ICE』と同じ変イ長調。
・5話のリップバームは7話キスへの布石?
・8話、ロシア大会の最中、マッカチンが饅頭を喉に詰まらせヴィクトルは日本に帰ります。8話Bパートの頭ですでに、マッカチンの目の前に饅頭が置いてありました。
・ユリオFS、カナダ大会では髪をおろしていました。ロシア大会(9話)・ファイナル(12話)では結っています。編み込みかわいいね天使だね。
時間が経過して髪が伸びたんだな、ということがわかる小ネタです。
・7話、例のケンカの後にヴィクトルのつむじを押す勇利。
このふたりにとってつむじを押すことは、仲を縮めることの象徴です。
フリープログラムを考えている時期、つむじを押した時(4話)に距離が縮まり、その頃から勇利の敬語も外れはじめました。
・「小豚ちゃんを王子様に変える魔法だね」
ヴィクトル「小豚ちゃんを王子様に変える魔法だね」(2話)
勇利はFSの『愛について~Eros~』を滑るにあたり、自分自身をカツ丼に仕立てようとしていました。
勇利「分かった!カツ丼!それが僕のエロスだ!」(3話)
勇利「僕、すっごく美味しいカツ丼になるんで、しっかり僕だけを見ててください」(3話)
でも本当は、勇利自身の魅力で滑れるようにならなければいけなかった。
勇利「ネクストステージ? 僕のカツ丼というエロスを演じても、その先があるってこと? まだ見つからない。このプログラムを通す大きな串みたいなものが、まだ足りない気がする」(3話)
そして実際に中国大会SPではカツ丼のイメージを克服し、勇利自身をイメージして滑れるようになります。
ヴィクトル「カツ丼や美女をイメージして俺を誘惑するのは終わりだ。勇利自身の魅力で戦える。もう十分イメージできてるだろ?」(6話)
「小豚ちゃん(カツ丼)を王子様(勇利自身)に変える魔法だね」というセリフをヴィクトルが言ったのは、まだ『愛について』を勇利に振り付けする前でした。
しかしその頃からヴィクトルは、勇利のポテンシャルをしっかり感じ取っていたということです。
いかがでしたか?
主にユリオくんが天使だということについて、おわかりいただけたと思います。異論は認めません。
優勝はロシア大会でカツ丼入りピロシキを食べさせてくれるユリオくんですね。
次点で虎のトレーナーに目がないユリオくんです。
でもどんなユリオくんも天使なので、ユリオくんがそこにいるだけで天国です
いかんいかんいかんいかんユリオくんがあまりに天使すぎて放っとくと永遠にユリオくんがあまりに天使であることについて語ってしまう、ちょっと一回落ち着こうね
さて、『ユーリ!!! on ICE』における「愛」は、最終的にフィギュアスケートそのものに対する愛に行き着くのだと思います。
そんな愛について教えてくれるアニメ『ユーリ!!! on ICE』。
ヴィクトルの初シニアシーズンを描いた過去編の完全新作劇場版「ICE ADOLESCENCE」も公開が決まっています。
現在のところ公開が延期になっていますが、いつまでも公開を待ってます。さ、ムビチケ何枚買うかな~
テレビアニメをまだ未見の方は、ぜひ再放送からご覧になってみてください。
それでは、ダスピダーニャ~