【in bloom シリーズ】斉藤壮馬さん『Summerholic!』考察
やった!ギリギリ8月に上げられたぞ!!
はい。
斉藤壮馬さんの配信シングル『Summerholic!』がリリースされました!
お耳が常夏パラダイスな曲でした。
ごちそうさまです!(?)
今回は歌詞がシンプルだったこともあり、考察ともいえない考察未満です。たぶん。すんません。
※ この記事はいち個人の所感によるものであり、曲や作者本人に対して正解を求めるものではありません。
以下に歌詞を多く引用するので、はじめに歌詞を貼っておく。
なお今回も公式から歌詞が出ていないので、わたしが耳コピしたものです。
アドバイスや指摘をくれた皆さん、ありがとうございました。人に支えられて生きてます。
◆「in bloom」シリーズとして
夏!──"季節のうつろい"のなかで
この曲は斉藤壮馬さんによる「in bloom」シリーズ の2曲目。
「in bloom」シリーズについてはこちらもどうぞ。
「in bloom」シリーズのテーマは「"季節のうつろい"、"世界の終わりのその先"」。
Information | 斉藤壮馬(SOMA SAITO) OFFICIAL WEBSITE
今回の『Summerholic!』は、8月のリリースに合わせたサマー・チューンになっている。
曲の構造について
『Summerholic!』はJ-POPとしては変則的な構造となっている。
ちなみに、これは『ぺトリコール』も同じであった。
さらにさかのぼると、『my blue vacation』で顕著に見られた特徴でもある。
──「各曲の変則的な構造について」の項を参照
直近で公開されたインタビューで壮馬さんは、その意図をこう語っている。
>例えばAメロ→Bメロ→サビという王道の構成の場合、それだけで安心感があるんです。「次にサビがくるな」って準備したうえで聴くことができますから。
でも 構成が変わっていく楽曲には、次に何が来るかわからないワクワク感がある。
どちらも音楽としてはありですが、自分は1曲のなかにもこんなにいろんな展開があったんだ! っていう驚きがあった方が好きなので、ワクワク感を重視してみました。
斉藤壮馬インタビュー 第2章からは「自分を解き放つ」ことにした理由 & 『Summerholic!』・9月新曲『パレット』の楽しみ方 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
・Summerholic!
Aメロ:ぴーかんの夏晴れだ~
サビ:太陽のせいにすんだ 夏の精にグッバイ~
Rap:明日の準備と摂生ルールと~
Dメロ:ああ素晴らしい こんな生活が~
落ちサビ:なあこんな日々だって 悪くないかもって~
サビ:太陽のせいにすんだ 夏の精にグッバイ~
・ぺトリコール
Aメロ:ふらふらり歩きながら~
Bメロ:石畳をゆく かたつむりはきっと~
サビ:灰色の雨 まち~
Dメロ:狂い咲くような6月のフレイバー
Rap:思い通りにいかない足取り~
サビ:灰色の雨 まち~
「in bloom」シリーズ以降、これらのように変則的なつくりの曲が増えそうである。
また、『ぺトリコール』リリース時、壮馬さんは「2章への橋渡し的な内容で、今までにないような味わいもある」と語っていた。
この「今までにない味わい」とはRap部分のこと?と考えた。
そして流れに乗るように、『Summerholic!』にもRapが入れ込まれている。
壮馬さんは「第2章」において、Rapによる表現を試みようとしているのではないだろうか?
その裏づけといっては何だが、先日、声優ラップバトルコンテンツ『ヒプノシスマイク』について、「多くの可能性が拓けた。斉藤壮馬個人としてもそうですし」と語っていた。
#ヒプマイ3周年 まで8日❗️
— ヒプノシスマイク-D.R.B-公式(ヒプマイ) (@hypnosismic) 2020年8月26日
夢野幻太郎役 斉藤壮馬さん(@SomaStaff )さんからコメントが🤫
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◆音楽面について
疾走感!
この曲はフルコーラスで3分半しかない。
1番サビの終わりが1分15秒。アニメ主題歌にも足りない短さである(アニメ主題歌の尺は一般的に1分半)。
『エピローグ』は6分超あったので、約半分ということに。改めて振り幅がすごいぞ斉藤壮馬。
曲の短さからも疾走感が感じられる。
Bメロがない効果
先述↑のメロ分けを見ても分かるが、『Summerholic!』にはBメロがない。
Aメロから歌が始まった……と思ったら、あっという間にサビに入ってしまう。
Bメロは一般的に、サビをより盛り上げるために一度オトす「タメ」の役割を担うことが多い。
緩急でいう「緩」の部分である。
この「タメ」の部分がないままサビに突入するというのは、イントロからサビまで休憩なしで突っ走るようなものだ。
曲尺がかなり短いのもBメロがないから、という理由が大きいだろう。
『Paper Tigers』(『my blue vacation』に収録)もBメロがない楽曲であった。
・Paper Tigers
Aメロ:いつから時代は過ぎ去って~
サビ①:今日なんてもうね 完全に悦楽日和です~
サビ②:サリエリみたいに器用なおれは~
Aメロ:イーアールサンスー~
Cメロ:うらぶれた そんな日は~
Dメロ:紙製のこの臓腑も~
サビ②:燃え尽き灰になったって おれは~
サビ①
サビ②
また、今回はELLEGARDENの高橋さんがドラムで参加されているので、エルレの曲をちょっとだけかじってみた。
するとBメロがない曲がいくつかあったので、挙げておく。
・The Autumn Song
・Supernova
・Mr.Feather
エルレ、マジで名前しか知らなかったんだけど『Mr.Feather』とか好きでした。
『Paper Tigers』がエルレの影響を受けてるんじゃないか?っていう考察を前に見たことがあって、それが今回ピンときた。
あと、Bメロがない曲はたぶん洋楽に多い。
サビの4つ打ち
4つ打ちとは、バスドラムを使い、1小節に四分音符が4回続くリズムのこと(Wikipediaより)。
4つ打ちは、「ドン・ドン・ドン・ドン」というように、拍の頭を打っていくことが特徴である。
『Summerholic!』のサビのドラムは4つ打ちになっている。
(と思うんだけど、ドラム聞き取るのが本当に苦手なので違ったらすまん)
そして4つ打ちのリズムにそのまま乗っかるように、サビのメロディーもほぼ四分音符だけで構成されている。
なんて打ちやすい楽譜!
サビで4つ打ちといえば、個人的には 大石昌良 が真っ先に思い浮かぶ。
大石さんの曲も疾走感のあるものが多い。
壮馬さんにも『フィッシュストーリー』を提供していたが、これも実は似ているリズムである。
・春夏秋冬☆Blooming!/A3!
・フィッシュストーリー/斉藤壮馬
4つ打ちはもともとダンスミュージックで使われ始めたビート。
縦ノリで、アゲアゲになりやすい。
わたしは、心臓の鼓動に近いリズムなので、身体にダイレクトに響くからではないかと考えている。
イントロのビート
イントロはドラムのみから始まる。エイトビートだが、バスドラが1拍目と3拍目裏。
「ズンチャチャッズンチャッ」というリズムになっている(字面にすると陽気感がすごい)。
このドラムのビートはイントロ、Aメロ、Rap部分、間奏、落ちサビに入っている。
ライブでは絶対クラップさせられるやつ(言い方)。
そして、このビートにはなぜか夏の曲が多い。
たとえば、『Summerholic!』のイントロからハイハットを除いて簡略化すると、ORANGERANGE『ロコローション』」のイントロになる。
調べてたら、「ロコローションのイントロは幼稚園児でも叩ける」とか言われてて笑った。
刺激が欲しけりゃバカになれ、バカ=単純、ということだろうか?
以下の曲にも同じビートが用いられている。見事に夏うたが多い気がする。
・ハダシの未来/嵐
・E.G. summer RIDER/E-girls
サビのペンタトニック
『Summerholic!』のサビは、5音(ミ♭ファソシ♭ド)しか使われていないペンタトニックである。
ペンタトニックを用いるとまず、和風に感じられるという場合がある。
日本に限らず、民族音楽にはペンタトニックを使ったものが多い。
しかし、この音階の効果はもうひとつあると思っている。
それは、音数が少ないため、万人が歌いやすくて売れやすいということ。
たとえば、RADWINPS『前前前世』のサビはペンタトニック(シド♯レ♯ファ♯ソ♯)。
以下の曲などもそうである。
・夏色/ゆず:シ♭ドミ♭ファソ
・366日/HY:ラ♭シ♭ドミ♭ファ
・恋するフォーチュンクッキー/AKB48:レミファ♯ラシ
・恋/星野源:ラシド♯ミファ♯
・Lemon/米津玄師:シド♯レ♯ファ♯ソ♯
・U.S.A. /DA PUMP:シレミファ♯ラ
・Don't say "lazy"/桜高軽音部(アニメ『けいおん!』ED):ミソラシレ
・God knows...(アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』劇中歌):ド♯ミファ♯ソ♯シ
これ……羅列してて、あまりにもスマッシュヒットソングばかりだったので、自分でもビビった(笑)
これらの曲と同じように、『Summerholic!』も売れ筋の音階でできていると分かる。
半音のメロ進行
イントロのギターの、半音ずつ下がっていくメロディーが印象的。
ロックというよりはロカビリーのような。50年代的な懐かしさを覚える。
イントロでピアノが半音ずつ移動している。
いや……サマーヌード良すぎんか。ずっと聴いてしまう。
半音の移動がどこから派生してるのか考えたとき、資料が見つからなかったので考えたら、ハワイアン・ミュージックから?と思い当たった。
1曲目から半音移動が多用されている。
※追記
サーフロックっていうんですね!!音楽のジャンルを知らなすぎる。またいっこ勉強になりました。
全体的にピッチ低め?
これは完全にわたしの耳に頼った情報なんですけど、ヴォーカルもバンドも、全体的に音が低めに設定されている? と感じた。
と言っても、2~3ヘルツの世界だと思うけど。
全体的に低くとることで、音程がつかめない=正常じゃない、酩酊している状態っぽさを出しているのかな、と思った。
◆歌詞について
ひと捻りしかしてないシンプルな曲。素直にひと捻りしてる。
面白い感じの曲になってる。
(ミューコミプラス 2020/7/2 放送)
>本楽曲は「ぴーかんの夏晴れ」という歌い出しから夏にぴったりの楽曲でありながら、よくよく聴くとそんな日に海に行くのではなく絶対外に出ないと決め家で自分流の贅沢に興じるという一癖あるおうちサマーチューン
斉藤壮馬、『in bloom』シリーズ第2弾デジタルシングル「Summerholic!」ジャケットを解禁!第3弾「パレット」の発売も決定!|リスアニ!|M-ON! Press
このエムオンの紹介のしかた面白いよね。「よくよく聴くと……」っていう(笑)
音的には海やドライブに行ってそうなアウトドア感が溢れているのに、よく歌詞を聴くと超インドアしてる。
>僕はもともと、『Summerholic!』の主人公のように、「今日はすごくいい天気だな」と思いながら、部屋のなかで映画を観たり飲みながら本を読んだりするのが好きなんです。それが自分なりの贅沢な夏の過ごし方のひとつ(笑)。
でもそれって一般的な考え方からすると、ちょっとズレてるんだろうなと。普通は「晴れてるのになんで外に行かないの?」って思いますよね。本人としては前向きに贅沢に夏を満喫しているんですけど。
だからある意味、素直にひねくれた曲なんです。そんなところがおもしろいんじゃないかなと思って書きました。
斉藤壮馬インタビュー 第2章からは「自分を解き放つ」ことにした理由 & 『Summerholic!』・9月新曲『パレット』の楽しみ方 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
ポップチューンでありながら、いつもの捻くれた壮馬節もちゃんと入れてくれる。大好きです。
また、真意はわからないが、ステイホームの現状と重ねている歌詞なのかな? とも思った。
ぴーかんの夏晴れでもどこにも行けないけど、おうち時間を楽しめばいいじゃん!っていう、ある種の応援歌のような。
太陽のせいにすんだ
夏の精にグッバイ
クーラーガンガンのパラダイス
太陽のせいにすんだ
夏の精にグッバイ
クーラーガンガンのパラダイス
Summerholic!
壮馬さんの曲で歌詞がリフレインするのは珍しい。
そんだけ、なんも考えずに聴けってことでしょう。刺激が欲しけりゃバカになれ。
それじゃ乾杯 気分上々だ
この人、家でひとりのはずなのに誰と乾杯してるのか?問題。
>歌いだし部分で「幽霊だってはしゃいじゃいそうだよね」って歌っていて、後半で誰かと「乾杯」しているということは……?
斉藤壮馬インタビュー 第2章からは「自分を解き放つ」ことにした理由 & 『Summerholic!』・9月新曲『パレット』の楽しみ方 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
……だそうです。スピリチュアル声優。(笑)
相変わらずお酒が好きですね!MVでもビールを美味しそうに飲んでいて。
絵面的には完全に「ク~リ~ア~ア○ヒが~家で冷えてる……」だよね。
過去には『デート』でも「乾杯」していた。
「気分上々」というと絶対あの曲が浮かぶ……世代なので……。
部屋で流してたら面白い。
mihimaruGT聴いててもおかしくないくらいノリノリだけどね、MV。
明日の準備と摂生ルールと睡眠不足と
何とかかんとか言っちゃうけれど
それはまあ一旦カッコのなかにポイしてさ
壮馬さんいわく、『Summerholic!』には『おジャ魔女どれみ』のオマージュが入れ込まれている(「別冊カドカワScene 03」より)。
『おジャ魔女どれみ』初代OP曲である『おジャ魔女カーニバル』の歌詞が意外と泣けると、すこし前にTwitterでバズっていた。
その中にはこんな詞が出てくる。
やな宿題はぜーんぶゴミ箱にすてちゃえ
ここが「カッコのなかにポイしてさ」に繋がっている?
また、『おジャ魔女カーニバル』には「ジュースでカンパイ、おかわり100パイ」という歌詞も出てくる。これも『Summerholic!』における「乾杯」とリンクしているかもしれない。
2020年の夏は、いつもと違う夏だった。
いろんなものが犠牲になった。
紙切れになったチケット。
着られる場所を失った一張羅。
生まれることすら許されないまま、消えていった物語たち。
「何もしない」をなかば強要されたわたしたちを、しかし太陽は眩しく見下ろしていた。
だが、「何もしない」ということは、実は最上の贅沢だったりする。
クーラーガンガンの部屋で熱いラーメンをすすったり、冬にこたつでアイスを食べたり……。
そういう非効率なこと、無駄なことこそ、豊かである証拠なのかもしれない。物理的にも、気持ち的にも。
『Summerholic!』はちょっと風変わりなサマーソングだった。
でも、今年はたしかに変わった夏だったのだから、それもいいかもしれない。
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